2026年9月22日、アメリカのトランプ大統領が国連総会で、気になる発言をしました。
これまで「AI(Artificial Intelligence)」と呼んできたものを、アメリカ政府では「SI(Super Intelligence)」と呼ぶというのです。 理由は「Artificialという言葉では偽物のように聞こえるから」。トランプ氏は「Superの方が正確だ」と説明しています。
しかし、ここで素朴な疑問が出てきます。 AIとSIは、そもそも同じものなのでしょうか。
トランプ氏はAI推進派
まず知っておきたいのは、トランプ政権のAIに対する姿勢です。
トランプ政権は基本的に、AI開発をどんどん進めたい立場です。
2025年に発表した「America’s AI Action Plan(米国AI行動計画)」でも、過度な規制を減らし、民間企業の開発や投資を促し、アメリカがAI分野で世界をリードすることを重視しています。 今回の国連演説でも、AIを国際的な枠組みで強く管理する動きに反対する姿勢を示しました。
つまり、規制を抑える ➾ 投資を促す ➾ AI開発を加速する ➾ アメリカが主導権を握るという考え方です。 では、なぜその中で「AI」という名前まで変えようとしているのでしょうか。
AIとSIはそもそも違う
ここが今回のニュースで最も気になるところです。
AIは「Artificial Intelligence」、日本語では人工知能です。 一方、Super Intelligenceは一般に、人間の知的能力を大きく上回る「超知能」という意味で使われてきました。 つまり、AIを別の英語に言い換えたものがSIではありません。
かなり単純化すると、現在のAI ➾ AGI(汎用人工知能) ➾ SI(超知能)というイメージです。

AGIは、特定の仕事だけではなく、人間のように幅広い課題へ柔軟に対応できる知能。 SIはさらにその先にある、人間の知能を大きく上回る存在です。 その意味では、現在のAIをいきなりSIと呼ぶことには違和感があります。
そもそも人間を超えたとは何か
さらに難しい問題があります。 「人間並みならAGI」「人間を超えたらSI」と説明しても、何をもって人間並みと判断するのでしょうか。 AIはチェスや囲碁では、すでに人間のトップレベルを超えています。 文章作成やプログラミングでも、人間以上の結果を出す場面があります。 しかし、すべての能力で人間を超えたわけではありません。
「能力の80%で人間を超えたらSI」という世界共通の基準があるわけでもありません。

実はAGIですら、どこからAGIなのか明確な線引きはありません。 そんな状況で現在のAI全体をSIと呼んでしまうと、技術の名前と技術の進化段階が混ざってしまうのです。
AIという言葉はすでに社会に根付いている
もう一つ問題があります。 AIという言葉は、すでに単なる専門用語ではありません。
「AI資格」「AI教材」「AI教育」「AIサービス」「AI企業」「AI人材」
教育、ビジネス、研究、法律など、さまざまな分野でAIという言葉が使われています。 突然「今日からSIです」と言われても、簡単にすべてを置き換えられるものではありません。 しかもSIには、もともと「人間を超える超知能」という意味があります。
「このSIは従来のAIなのか。それとも本当の超知能なのか」
そんな余計な説明まで必要になります。
たった2文字を変えるだけでも、社会への影響は2文字では済まないのです。

世界中でSIに変わるわけではない
では、これから私たちもSIと呼ぶことになるのでしょうか。
現時点では、そう決まったわけではありません。 アメリカ政府がSIという表記を使ったとしても、世界中の政府、企業、大学、研究機関が一斉に変更するとは限りません。
場合によっては、米政府ではSI ➾ 民間や研究分野ではAIという状態になる可能性もあります。 むしろ、その方が混乱するかもしれません。
なぜ今SIなのか
トランプ氏本人は、ArtificialよりSuperの方が実態に合っているという趣旨の説明をしています。 ただ、今回の発言は、AIへの規制を抑え、アメリカのAI開発を加速させようという政策の中で出てきました。
ここからは一つの見方ですが、「人工的な知能」ではなく「優れた知能」と表現することで、AIをアメリカが世界をリードする強力な技術として印象付けたい狙いもあるのかもしれません。 しかし、名前を変えても技術そのものは変わりません。 SIと呼んだからといって、AGIが完成したわけでも、人間を超える超知能が誕生したわけでもないのです。 だからこそ大切なのは、AIなのかSIなのかという名前ではありません。 「実際に何が変わったのか」を見ることです。 技術の名前は、その技術の実態を表すものなのか。 それとも、その技術を社会にどう見せたいかによって変わるものなのか。
今回の「AIからSIへ」というニュースは、そんなことまで考えさせられる出来事なのです。


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