生成AIは急速に進化しています。 しかし、AIの性能が高くなるほど、大量の電力と冷却設備が必要になります。 これからのAI競争では、より賢いAIを作ることだけでなく、そのAIを安定して動かすためのインフラが重要になります。
AIはどれくらい電気を使うのか
生成AIへの短い質問1回に使われる電力は、推計で約0.3Whとされています。
1回だけなら大きく見えませんが、世界中から膨大な数の質問が送られ、画像生成や動画生成、企業のデータ分析などにも使われれば、必要な電力は一気に増えます。
さらに、AIを動かすサーバー側では、より大きな電力が必要です。
NVIDIAのAIシステム「DGX GB200」は、ラック1本で約120kWを消費します。これは、1.2kWの電気ケトルを約100台同時に使う規模です。
大規模なAIデータセンターでは、このようなラックを何十本、何百本と並べます。
しかも必要なのは、GPUを動かす電力だけではありません。
冷却装置、ポンプ、電力変換設備、通信設備などにも電気が使われます。
AIの頭脳にインフラが追いついていない
現在のAIは、頭脳にあたる半導体やAIモデルが急速に進化する一方で、それを支える身体や血管にあたる電力・配電・冷却設備が追いつかなくなり始めています。
必要な電気を供給できなければ、大量のGPUを動かせません。
また、冷却が追いつかなければ、GPUが故障を防ぐために性能を落として動くこともあります。
つまり、AIそのものの能力が低いのではなく、その能力を十分な規模で引き出すためのインフラが不足しているのです。
電気を作るだけでは解決しない
AIの電力問題を解決するには、発電量を増やすだけでは不十分です。
同じ電力で、より多くのAI処理を行えるようにする必要があります。
そのためには、電気を安定して作ることに加えて、配電時の損失を減らし、必要な場所に必要な分だけ電気を送り、冷却に使う電力を減らすことが重要です。
つまり、これからは、電気を作る技術と、電気を無駄なく使う技術の両方が求められるのです。
NVIDIAと三菱重工の協力
そこで注目されているのが、NVIDIAと三菱重工の協力です。
三菱重工は、発電設備、大型冷凍機、ポンプ、熱交換器、制御システムなど、大規模施設を動かすための技術を持っています。 電気を作るところから、効率よく配り、サーバーを冷やし、施設全体を制御するところまでまとめて提案できるのが強みです。
NVIDIAと三菱重工の協力関係は公式に発表されていますが、どこのデータセンターに、いつ、どの規模で導入されるのかは、まだすべて決まっているわけではありません。
液体冷却はどんな仕組みなのか

液体冷却では、GPUやCPUの近くに冷却液を流し、発生した熱を直接回収します。
従来の空冷は、サーバールーム全体に冷たい空気を送り、ファンを回して機器を冷やします。
一方、液体冷却は、熱を出している部品の近くから直接熱を取り除きます。
空気よりも液体のほうが熱を効率よく運べるため、部屋全体を強い空調で冷やすよりも、省エネルギーにつながる可能性があります。
冷却が安定すれば、GPUも本来の性能を発揮しやすくなります。
つまり液体冷却は、単なる暑さ対策ではなく、AIの性能と省エネルギーの両方に関わる技術なのです。
日本の誇れる技術になる可能性
この取り組みが本格的に実用化され、世界のAIデータセンターで使われるようになれば、日本の誇れる技術になる可能性は十分にあります。 ただし、液体冷却そのものは海外企業も開発しています。
日本の強みは、冷却装置だけでなく、発電、配電、熱交換、設備制御までを一つのシステムとしてまとめ、安全に長期間運用できる点にあります。 高性能な機械を作るだけでなく、それを安定して動かし続けることは、日本の製造業が長年得意としてきた分野です。
これからはAIインフラの競争になる
これからのAI競争は、より賢いAIを作る競争であると同時に、そのAIを安定して効率よく動かせるインフラを誰が作るかという競争になります。 AIの未来を決めるのは、AIの頭脳だけではありません。
電気を無駄なく届け、発生した熱を処理し、24時間動かし続けるための技術も、AIの進化を左右するのです。


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