最近、テレビを見ていて「映画のCMを昔ほど見なくなったな」と感じることはないでしょうか。
以前は新作映画が公開されるとなると、テレビで何度も予告CMが流れていました。
ところが今は、YouTubeやSNSで映画の予告を見ることのほうが増えています。
もちろん映画の宣伝そのものがなくなったわけではありません。 変わったのは、私たちが情報と出会う場所です。 そこには、もっと大きな変化があります。 私たちは今、情報を「待つ」のではなく「探す」時代を生きているのです。
昔は情報が向こうからやってきた
少し前まで、情報は向こうからやってくるものでした。
☛ テレビを見ていたら、新しい映画を知る。
☛ 新聞を読んでいたら、興味のなかったニュースが目に入る。
☛ ラジオを聞いていたら、知らない曲が流れてくる。
自分から探さなくても、さまざまな情報が生活の中に入ってきました。 映画のCMもその一つです。 映画に興味がなかったとしても、テレビを見ていれば「こんな映画が始まるんだ」と知ることができました。 つまり昔は、自分が探していない情報とも自然に出会える環境だったわけです。
今は欲しい情報を自分で探す
ところがスマートフォンが普及すると、情報の集め方は大きく変わりました。
映画が気になったら検索する。 YouTubeで予告を見る。 SNSで感想を読む。 上映時間を調べ、そのままチケットを予約する。 欲しい情報は、ほとんど自分から取りに行けます。
広告する側にとっても、この変化は大きな意味があります。 テレビCMなら幅広い人に一斉に届けることになりますが、ネット広告なら映画に興味がありそうな人へ絞って見せることができます。
2025年の日本では、インターネット広告費が広告費全体の半分を超えています。 動画広告やSNS広告も伸びており、企業の宣伝場所そのものが変わってきています。
映画CMが減ったように感じるのも、映画の宣伝がなくなったのではなく、宣伝する場所がテレビからネットへ移ってきたと考えると分かりやすいでしょう。
情報を探せる時代はとても便利
この変化は、私たちにとって非常に便利です。 知りたいことがあれば検索すればいい。 映画なら予告編も口コミも上映時間もすぐに見つかります。
昔のように、テレビCMが流れるまで待つ必要はありません。
これは映画だけではありません。
旅行先を調べる。 商品を比較する。 勉強方法を探す。 就職先について調べる。
今では、欲しい情報の多くを自分で探せるようになっています。
ただ、便利になったからこそ見えにくくなったものもあります。
自分で探すと自分の興味の中だけになりやすい
ここで少し考えてみましょう。
自分で情報を探すとき、私たちは基本的に自分が知っている言葉を使って検索します。
映画が好きなら映画を検索する。 ゲームが好きならゲームを見る。 興味のあるニュースばかり読む。 これは効率的ですが、自分の興味の外にある情報とは出会いにくくなります。
そもそも、存在を知らないものは検索できません。 「知らない映画のタイトルを検索する」ということはできませんし、「存在すら知らない本」を目的を持って探すこともできません。
ここに、今の情報社会の少し面白いところがあります。
本屋では知らなかった本に出会える
例えば本屋です。 ネット通販なら、欲しい本のタイトルを入力すればすぐに見つかります。 購入するだけなら、とても便利です。 それでも本屋へ行くのが好きな人はいます。
目的の本を探して歩いていると、隣の棚の本が目に入る。 平積みされている本のタイトルが気になる。 普段は読まないジャンルなのに、なぜか表紙に引かれて手に取ってみる。
そして、「こんな本があったんだ」という発見があります。
こうした予想していなかった発見を、セレンディピティと呼ぶことがあります。
本屋が好きな人の中には、本を買うことだけではなく、こうした偶然の出会いを楽しんでいる人もいるのではないでしょうか。
ネットのおすすめは偶然とは少し違う
もちろんネットにも「おすすめ」はあります。 YouTubeを開けばおすすめ動画が表示されます。 通販サイトでも、自分が興味を持ちそうな商品が表示されます。
一見すると、これも知らなかったものとの出会いです。 ただし、その多くは過去に見た動画や検索履歴、購入履歴などをもとに選ばれています。
つまり、「知らない世界を見せてくれる」というより、「自分が好きそうな世界を見せてくれる」という仕組みに近いのです。 便利ではありますが、本屋でたまたま隣の棚を見て、まったく興味のなかった分野の本に出会うこととは少し違います。
効率が良すぎることにも弱点がある
私たちは長い間、欲しい情報をできるだけ早く手に入れる方法を進化させてきました。
これは間違いなく便利なことです。 しかし、効率が良くなりすぎると、寄り道をしなくなります。 寄り道をしなくなると、偶然の発見も減っていきます。
目的もなく本屋を歩く。 普段見ないニュースを見る。 知らない人の話を聞く。 いつもとは違うジャンルの動画を見る。 一見すると無駄に思える時間ですが、そこから新しい興味が生まれることがあります。 新しいアイデアは、自分の知っている範囲だけから生まれるとは限りません。
情報を探す力と偶然に出会う余白
映画CMを以前ほど見なくなった背景には、単なる広告の変化だけではありません。
昔は、テレビや新聞などを通して情報が向こうからやってきました。 今は、自分から欲しい情報を探しに行くようになっています。 その結果、私たちはとても便利な環境を手に入れました。 しかしその一方で、自分では探さなかった情報と偶然出会う機会は少なくなっているのかもしれません。
これから必要なのは、検索する力だけではないでしょう。 欲しい情報を自分で探す。 そして、ときには自分の興味の外にある情報にも触れてみる。 情報を探す力と、偶然が入り込んでくる余白。 便利な時代だからこそ、この両方を持っておくことが大切なのではないでしょうか。



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