企業へのサイバー攻撃や情報漏えいのニュースが相次いでいます。 システムが停止して業務が続けられなくなったり、顧客情報が流出したりと、その影響は企業だけにとどまりません。 なぜ日本がサイバー攻撃の標的になるのでしょうか。 日本企業には攻撃する価値があるのか。 それとも、日本は侵入しやすい国なのでしょうか。
その背景を、攻撃者の視点から考えてみましょう。
日本へのサイバー攻撃は本当に増えている?
情報通信研究機構(NICT)によると、2025年に観測されたサイバー攻撃関連通信は約7,010億パケット。 前年より約2.2%増加し、過去最多となりました。

ただし、これは日本企業への攻撃件数ではなく、攻撃先を探す通信などを含む観測値です。 また、IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの脅威として「ランサム攻撃による被害」が1位となっています。 日本が世界で最も狙われているわけではありませんが、サイバー攻撃が深刻な問題になっていることは確かです。
「日本はお金になるから狙われる」のか、それとも「日本は侵入しやすいから狙われる」のか。
日本には、自動車や電子部品など、世界的な技術力を持つ企業が数多くあります。 企業が保有する技術情報や顧客情報には価値があり、工場や物流システムが停止すれば大きな損失が発生します。 攻撃者は、こうした状況につけ込んで金銭を要求します。 一方、古いシステムを使い続けていたり、セキュリティ対策に十分な人員や予算を確保できなかったりする企業もあります。
さらに、大企業の防御が強固でも、取引先を経由して侵入される場合があります。 つまり、「攻撃する価値があることと、侵入できる弱点があること」この二つが攻撃者にとって重要なのです。 ただし、日本が他国より侵入しやすいと断定できるわけではありません。
日本は島国だった|地理的な壁と言葉の壁
日本は海に囲まれ、他国と陸続きの国境を持たない島国です。 歴史的にも地理的な隔たりがありました。 こうした環境が安全に対する意識に影響した可能性はあるかもしれませんが、インターネットの世界には海も国境もありません。 海外にいる攻撃者でも、日本の企業や個人を直接狙えます。 そして日本には、もう一つ特徴的な壁がありました。 それが「日本語」です。
日本語そのものがセキュリティになっていた?|AIが変える詐欺の手口
以前は海外から届く詐欺メールには、不自然な日本語が使われているものがありました。

例えば、「あなたの銀行口座は危険状態です。しない場合、口座は停止になるです。」 こんな文章を見れば、怪しいと気づく人も多かったでしょう。 日本語の文法や敬語、自然な言い回しは、外国人にとって簡単ではありません。 そのため、言葉の壁が詐欺を見抜く手がかりになっていました。
ところが、生成AIによって状況が変わりました。 日本語が分からなくても、AIを使えば自然で丁寧な文章を簡単に作成できます。 さらに、AIは人間らしい音声を生成したり、実在する人物の声に似せたりすることもできます。 家族や上司に似た声で送金を求められても、声だけで本人と判断するのは危険です。
これまでは「日本語がおかしいから怪しい」と判断できたものが、
今では「日本語が自然でも怪しいかもしれない」時代になったのです。
サイバー攻撃は犯罪ビジネスになっている

現在のサイバー攻撃は、高度な技術を持つ一部の人だけが実行するものではありません。 例えば、攻撃ツールを開発する人と、実際に企業へ侵入する人が役割を分担する仕組みがあります。 ランサムウェアをサービスとして提供する「RaaS(ラース)」も、その一例です。 さらにAIによって、詐欺メールの作成や情報収集などの作業も効率化できます。 技術や言語の壁が低くなることで、攻撃者の裾野が広がる可能性があるのです。
サイバー攻撃は私たちの生活にも影響する
物流会社が攻撃されれば商品の配送が遅れ、病院のシステムが停止すれば診療にも影響します。 企業から流出した個人情報が、別の詐欺に悪用される可能性もあります。 サイバー攻撃は、もはや企業だけの問題ではありません。
まとめ|これからは「怪しいと気づく」だけでは守れない
日本が狙われる背景には、企業が持つ経済的な価値やシステムの弱点、サイバー犯罪のビジネス化があります。 さらにAIの進化によって、これまで詐欺を見抜く手がかりだった言葉の壁も低くなっています。 銀行を名乗るメールが届いても、メール内のリンクではなく公式アプリから確認する。知人の声で送金を求められても、別の手段で本人に確かめる。 こうした習慣が大切です。
これまでは、不自然さに気づくことが自分を守る方法の一つでした。
しかし、AI時代には、違和感がないことが安全の証明にはなりません。
これから必要なのは、怪しいものを見抜く力だけでなく、信用する前に確かめる習慣なのではないでしょうか。


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