2026年9月、少し驚くニュースが報じられました。
NECが、量子コンピューターの「マシン開発」から2026年3月末で撤退していたというのです。さらに、開発に携わっていた多くの研究者が、ライバル企業である富士通へ移籍したと報じられました。
ただし、ここで注意したいことがあります。 今回報じられたのは、NECが量子コンピューターそのものから完全撤退したという話ではありません。 あくまで、量子コンピューター本体を自社で作る「マシン開発」から撤退したということです。
そして気になるのが、「なぜNECは撤退したのか」という点です。
結論から言えば、具体的な理由までは公表されていません。
そこで今回は、分かっている事実と、そこから考えられることを分けて見ていきます。
NECは量子コンピューターの草分けだった
今回のニュースが注目される理由の一つが、NECの歴史です。 NECは1999年、超伝導固体素子を使った量子ビットの動作実証に世界で初めて成功しました。 量子ビットとは、簡単に言えば量子コンピューターで計算するための基本単位です。 現在、IBMやGoogleなども開発を進めている超伝導方式につながる研究を、NECはかなり早い段階から進めていました。
その後もNECは研究を続け、2020年代に入ってからも量子コンピューターの実用化に向けた研究成果を発表しています。
つまりNECは、昔少し研究していただけの企業ではありません。
だからこそ、今回のマシン開発撤退にはインパクトがあります。
研究者は富士通へ移籍
さらに注目されたのが、人材の移動です。
報道によると、NECで量子コンピューター開発に携わっていた多くの研究者が富士通へ移籍しました。
これはNECと富士通が会社同士で人材を派遣した、という話ではありません。
報道を見る限りでは、NECを離れた研究者が富士通側へ移ったということです。
量子コンピューターのような最先端分野では、設備だけでなく、その技術を長年研究してきた人材そのものが大きな財産です。
NECがマシン開発から撤退する一方で、その経験を持った研究者が富士通へ移ったという点は、日本の量子コンピューター開発を考えるうえでも重要な動きでしょう。
撤退と人材流出、どちらが先だったのか
ここで気になる疑問があります。
研究者が抜けたためにNECが開発を続けられなくなったのでしょうか。
それとも、NECがマシン開発から撤退することを決めたため、研究者が富士通へ移ったのでしょうか。
この因果関係については、現時点では分かっていません。
わかっているのは、
NECがマシン開発から撤退したこと。
多くの研究者が富士通へ移ったこと。
この二つです。
どちらが先だったのか、あるいは並行して進んでいたのかまでは公表されていません。
なぜNECは撤退したのか
ここからは考察です。 NECが撤退した具体的な理由は公表されていません。
ただ、量子コンピューターを取り巻く環境から考えれば、いくつかの可能性があります。
一つは、開発に必要な投資の大きさです。
量子コンピューターは、優れた量子ビットを作れば完成するものではありません。
量子ビットを増やし、エラーを減らし、安定して制御し、さらにソフトウェアまで含めたシステムとして完成させる必要があります。 そこではIBMやGoogleなどの巨大企業も競争しています。
研究成果を出すことと、実際の製品やサービスとして成立させることでは、必要な資金も人材も大きく違うのです。
もう一つは、経営資源をどこへ集中させるかという判断です。 たとえ高い技術を持っていても、自社でマシンを作り続けることが事業として最善なのかは別問題です。
「世界初」でも最後まで勝てるとは限らない
今回のニュースで特に興味深いのはここです。 NECは1999年という非常に早い時期に、世界初の成果を生み出しました。 それでも約27年後、マシン開発から撤退することになりました。
これは、「最初に技術を生み出した企業が、その市場で最後まで主役になるとは限らない」ということを示しているように思います。 良い技術を作る力と、それを何十年も育て、投資を続け、事業として成立させる力は別物です。
今回の撤退理由や研究者移籍との因果関係は、今のところ分かっていません。
それでも、かつて世界を先行したNECがマシン開発から降り、その人材が富士通へ移ったという出来事は、最先端技術をビジネスとして育て続けることの難しさを考えるうえで、非常に象徴的なニュースではないでしょうか。



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