アメリカではWaymoのロボタクシーが一般客を乗せて走り、中国ではPony.aiなどが数千台規模への拡大を進めています。 では、自動車大国の日本はどうなのでしょうか。
「日本は自動運転の技術で負けているのでは?」そう感じる人もいるかもしれません。
しかし、2026年現在の状況を見ると、答えはそれほど単純ではありません。
日本は自動運転技術そのものを持っていないわけではありません。
むしろ問題は、技術を街の中でサービスとして大量に使う“社会実装”のスピードにあります。
日本は本当に技術で遅れているのか?

まず知っておきたいのは、日本は自動運転技術でずっと後発だったわけではないということです。
2020年、日本ではHonda LEGENDが自動運転レベル3の車両として世界で初めて型式指定を受けました。 翌2021年には実際に市販されています。
さらに2023年には、福井県永平寺町で国内初となるレベル4の自動運転車が認可されました。レベル4とは、決められた条件の中であれば、運転者がいなくてもシステムがすべての運転を行う段階です。
つまり、「日本には自動運転を作る技術がない」という見方は正しくありません。 車両制御、センサー、安全技術など、日本の自動車メーカーが得意としてきた分野には十分な技術があります。
では、なぜWaymoのようなサービスが見えないのか?

違いが出ているのは、ここです。 経済産業省も、自動運転サービスについてはアメリカと中国が社会実装を先行し、日本や欧州は実証段階が中心という整理をしています。
Waymoの場合、実際の都市で一般客を乗せて走っています。
すると毎日、
走行データが集まる
↓
問題が見つかる
↓
AIや運行方法を改善する
↓
さらに車両を増やす
という循環が生まれます。
ここが重要です。 自動運転では、車を一台作って終わりではありません。
実際の街を走った経験そのものが、次の技術力になるからです。
社会実装が早い国ほど、データと運行ノウハウが蓄積され、さらに先へ進みやすくなります。
日本の法律が遅れの原因なのか?
では、日本では法律が自動運転を止めているのでしょうか。
これも、単純に「法律が遅い」とは言えません。
日本では2023年4月から、レベル4に相当する「特定自動運行」の許可制度が施行されています。
つまり、一定の条件を満たせば、運転者がいない自動運転を法律上行うことは可能です。
ただし、実際にサービスを始めるには、車両の安全性、走行する道路、運行条件、遠隔監視、事故時の対応、地域との調整など、多くの条件を確認する必要があります。 日本では、まず限定された地域や路線で安全性を確認し、少しずつ範囲を広げていく進め方が中心です。
「慎重に進めること」は悪いことなのか?
もちろん、自動運転は安全に直接関わる技術です。
事故が起きた場合、車両メーカーなのか、運行会社なのか、自動運転システムなのか
責任の所在も整理しなければなりません。
さらに日本の都市には、狭い道路、自転車、歩行者、複雑な交差点なども多くあります。
海外で動いたシステムを、そのまま日本に持ってくれば済むわけではありません。
実際、世界で自動運転サービスを展開するWaymoも、日本交通とGOと組み、東京の道路に合わせて技術を調整しています。
現在は港区、新宿区、渋谷区、千代田区などで、日本交通の乗務員が同乗した状態で走行し、東京特有の交通環境への適応を進めています。Waymo自身も、東京ではまだ一般向け乗車サービスを提供していないと説明しています。
つまり、世界最先端のWaymoですら、東京では一から学習しているということです。
ただし「慎重すぎること」にもリスクがある
一方で、慎重であればいいという話でもありません。
日本が、
実証実験
↓
安全確認
↓
制度調整
↓
また実証実験
を繰り返している間に、海外では商用サービスが拡大します。
そうすると、最初は技術差が小さかったとしても、走行データの量、AIの改善速度、運行経験で差が広がる可能性があります。 ここが、日本にとって最も注意すべきところです。
つまり、「技術で負けたから実用化できない」のではなく、「実用化が遅れることで、将来の技術差まで広がる」可能性があるのです。
Waymoが東京に来ている意味

そして象徴的なのが、Waymo自身が日本に進出していることです。 Waymoは日本交通、タクシーアプリのGOと提携し、東京で自動運転配車サービスを導入する準備を進めています。
2026年3月には、Waymoが東京での取り組みの進展を発表し、将来的なサービス提供開始に向けて開発を続けていることも明らかにしています。
ここで一つ興味深い問題が出てきます。
日本は世界有数の自動車大国です。
しかし将来、日本の街を走るロボタクシーの「頭脳」が、Googleから生まれたWaymoになる可能性もあります。
競争の中心が、「いい車を作れるか」から、「AIとデータを使って移動サービスを運営できるか」へ変わりつつあるからです。
私たちはどう見ればいいのか
日本は自動運転技術そのものを持っていないわけではありません。
世界初のレベル3市販車を実現し、レベル4の制度もすでにあります。
それでも、ロボタクシーの社会実装ではアメリカや中国に先行されています。
だから現在の日本を、「技術的に完全に負けている」と見るのも、「法律が邪魔しているだけ」と見るのも正確ではありません。
大きな差は、技術を実際のサービスとしてどれだけ早く、どれだけ大規模に社会へ出せるかという点にあります。
自動運転の競争は、研究室や自動車工場だけで行われるものではなくなりました。
これから重要になるのは、実際の街でどれだけ走らせ、経験を積めるかです。
では、日本で一般の人がアプリを使って無人ロボタクシーを呼べる日は、いつ来るのでしょうか。
次の記事では、Waymoの東京進出なども踏まえながら、「日本でロボタクシーに乗れるのはいつなのか」を考えていきます。


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