2026年9月8日、名古屋では線状降水帯が発生し、記録的な大雨となりました。
こうした災害時にスマートフォンがつながりにくくなると、まず考えられるのは、多くの人が一斉に通信することで起こる「輻輳(ふくそう)」や、基地局・通信回線の障害です。 実際、通信への影響としては、こちらのほうが大きいと考えるのが自然です。
ただ、今回の豪雨をきっかけに、もう一つ気になったことがあります。
「そもそも、大雨そのものがスマホの電波に影響することはないのか?」
実は、雨も電波に影響します。
今回は、意外と知られていない「雨と電波」の関係を分かりやすく解説します。
雨で電波が弱くなる「降雨減衰」
雨が電波を弱くする現象は、降雨減衰(こううげんすい)と呼ばれています。
電波が空気中を進む途中に大量の雨粒があると、その一部が吸収されたり、別の方向へ散乱したりします。 その結果、目的地まで届く電波が弱くなります。
簡単に言えば、雨粒が多いほど、電波が途中で少しずつ弱くなるということです。
もちろん、小雨が降っただけでスマートフォンが使えなくなるわけではありません。
重要なのは、雨の強さと、使っている電波の周波数です。
高い周波数ほど雨の影響を受けやすい
電波にはさまざまな周波数があります。
一般的には、周波数が高くなるほど、雨などの影響を受けやすくなります。
5Gでは、4Gに近い比較的低い周波数帯だけでなく、より高い周波数も利用されています。
特に「ミリ波」と呼ばれる高い周波数帯では、雨による影響が大きくなります。 NTTドコモも、38GHz帯を使った実験で、ミリ波は降雨による電波減衰の影響を受けやすいと説明しています。
5Gは4Gより雨に弱いの?
ここは少し注意が必要です。
「5G=雨に弱い」と単純に考えるのは正しくありません。
5Gには複数の周波数帯があり、すべてが同じ性質ではないからです。
普段スマートフォンに「5G」と表示されていても、必ずミリ波で通信しているわけではありません。
一方で、高い周波数ほど、
・遠くまで届きにくい
・建物などの障害物に弱い
・雨の影響を受けやすい
という特徴があります。
つまり、5Gそのものが雨に弱いのではなく、5Gで使われる高い周波数帯ほど雨の影響を受けやすいと考えるのが正確です。
BS・CSが大雨で映らなくなるのも同じ仕組み
「雨で電波が弱くなる」と聞いても、イメージしにくいかもしれません。
身近な例が、BSやCSなどの衛星放送です。
大雨の日に、「BSの映像が乱れた」「急に映らなくなった」という経験がある人もいるのではないでしょうか。 これも、雨によって電波が弱くなる降雨減衰が原因の一つです。 衛星放送では高い周波数の電波を使い、さらに宇宙から地上まで長い距離を進むため、雨の影響を受けやすくなります。
スマートフォンの高周波数通信でも、基本的な考え方は同じです。
では、今回の名古屋豪雨でも雨が原因だった?
今回のような大雨で5Gがつながりにくくなったとしても、「雨が降ったから5Gが使えなくなった」と考えるのは適切ではありません。
災害時には、
・利用者が集中する輻輳
・基地局の停電
・通信設備の障害
・基地局までの回線障害
など、通信を不安定にする要因がいくつもあります。 スマートフォンがほとんど使えなくなる場合には、こうした要因のほうが影響は大きいと考えられます。 そのうえで、猛烈な雨そのものも、特に高い周波数帯では通信環境を悪化させる一つの要素になり得るという位置づけです。
つまり、「主な原因は輻輳など。ただし雨も無関係ではない」ということです。
まとめ|雨も電波に影響する
雨粒によって電波が吸収・散乱され、電波が弱くなる「降雨減衰」という現象があります。
特に高い周波数ほど、その影響を受けやすくなります。 ただし、大雨の日にスマートフォンがつながらなくなったからといって、雨だけが原因とは限りません。
災害時には輻輳や基地局・通信回線の障害などのほうが大きな影響を与える場合があります。 そのうえで、猛烈な雨では、雨そのものも通信品質を少し悪化させる可能性がある。
普段何気なく使っているスマートフォンですが、電波には「速さ」だけでなく、周波数や距離、障害物、そして天候まで関係しています。 こうした仕組みを知っておくことも、これからのITリテラシーの一つではないでしょうか。



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