AIに相談する時代|便利さの裏にある「人に相談しなくなる」リスク

AIと未来

先日、Yahooニュースに、AIメンタルケアアプリについて興味深い記事が掲載されていました。
悩みや不安を24時間いつでも相談できるAIメンタルケアアプリが人気を集め、記事で紹介された「Awarefy」は累計100万ダウンロードを突破したといいます。
人間には話しにくいことでも、AIなら気軽に話せる。 これはメリットかもしれません。
しかし、そのアプリの開発者自身が、ある危険性を指摘しています。
それは、「人間の相談先が減ること」です。
AIに相談すること自体が問題なのではありません。 問題なのは、AIがあまりにも話しやすいために、家族や友人、専門家など、人間に相談しなくなってしまうことです。
では、AIへの相談はどこまで頼っていいのでしょうか。

なぜAIには相談しやすいのか

AIが相談相手として選ばれる理由は分かりやすいです。
24時間いつでも使えますし、相手の都合を気にする必要もありません。
人間に相談すると、「こんなことを話して迷惑ではないか」「否定されたらどうしよう」と考えてしまうことがあります。 AIには、その心理的なハードルがほとんどありません。
同じ話を何度しても嫌な顔をされず、感情的に反論されることもありません。
だからこそ、人には言えなかった悩みをAIには話せる人もいます。
ただ、この「話しやすさ」が落とし穴にもなります。

「何でも肯定してくれるAI」は本当に優しいのか

悩んでいるときに、「それはつらかったですね」「あなたは頑張っていますよ」と言われれば、気持ちは楽になります。 しかし、共感と同調は同じではありません。
たとえば、「上司が全部悪いですよね」と相談したとき、AIが毎回、「そうですね。あなたは悪くありません」と答え続けたらどうでしょうか。
その瞬間は楽でも、自分の考え方を見直す機会は減ってしまいます。

今回取り上げたAwarefyでは、単純に肯定するだけでなく、「別の考え方もできないでしょうか」と問い返すような設計を重視しているそうです。

つまり大切なのは、気分を良くすることだけではなく、考え方を整理することなのです。

本当に怖いのは「人間に相談しなくなること」

今回の記事で特に印象的なのが、「最近は、人間に相談しなくなりました」という利用者の言葉です。
AIは話しやすい一方、人間は反論することもありますし、こちらが聞きたくないことを言うこともあります。 だからAIだけに相談したくなる気持ちは分かります。

しかし、理想的なのは、
AIに相談する
 ↓
気持ちを整理する
 ↓
必要なら家族や友人、専門家にも相談する
という流れです。

AIに相談した結果、人間への相談をやめてしまえば、相談先は増えるどころか減ってしまいます。
AIは「人間の代わり」ではなく、相談先を一つ増やす道具として使うことが大切です。

AIには見えないものがある

精神科医は、患者の言葉だけを見ているわけではありません。
表情が暗い。
普段遅刻しない人が遅刻してきた。
いつもより服装が乱れている。
逆に、久しぶりに身だしなみが整っている。
こうした小さな変化も、相手の状態を知る手がかりになります。

しかし、文字で相談するAIが基本的に分かるのは、利用者が入力した情報だけです。
本人が「大丈夫です」と書いていても、実際には食事がとれていなかったり、生活が大きく乱れていたりするかもしれません。
本人自身が気づいていない変化なら、AIに伝えることもできません。
ここは、人間とAIの大きな違いです。

すぐ答えをもらえることにも注意が必要

AIは数秒で答えてくれます。
便利ですが、人間には、ときには自分で悩む時間も必要です。
「なぜ自分はこう考えるのか」「別の見方はできないか」「自分はどうしたいのか」
こうしたことを考え、自分なりの答えを見つける過程が必要なこともあります。
AIが毎回答えを出してくれるからといって、自分で考える作業までAIに任せてしまうのは注意が必要です。 これはメンタルケアだけでなく、仕事や勉強でも同じでしょう。

私たちはどう使えばいいのか

AIへの相談をやめる必要はありません。
むしろ、人には話せなかったことをAIに話し、気持ちを整理することには大きな意味があります。
大切なのは、AIを最後の相談相手にしないことです。
家族にも相談できる。
友人にも相談できる。
専門家にも相談できる。
そしてAIにも相談できる。
こうして複数の相談先を持つことが大切です。
AIは便利な相談相手です。

しかし、「いつでも相談できる相手」と「すべてを任せる相手」は違います。
これからの時代に必要なのは、AIを使わないことではありません。
AIを使いながらも、AIだけにしないこと。
それが、AIとうまく付き合うための大切な考え方ではないでしょうか。

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