AIが進化すると、映画やドラマの作り方も変わっていくのでしょうか。
これまでは、脚本家や監督、プロデューサーなどが、
「この展開なら面白いだろう」
「この俳優なら人気が出るだろう」
と、経験や感覚をもとに作品を作ってきました。
ところが今は、AIやデータ分析を使うことで、
「どんな登場人物が人気なのか」
「どんな展開が好まれやすいのか」
「どんな場面で視聴者が興味を持つのか」
といった傾向も見つけやすくなっています。
では、人気のあるものを全部集めれば、最高に面白い作品ができるのでしょうか。
人気のあるものを全部入れればいい?
たとえば分析の結果、
・恋愛のある作品は人気が高い。
・人気俳優が出ると注目される。
・途中で大きな事件が起きると盛り上がる。
・最後にどんでん返しがあると評価されやすい。
そんな傾向が分かったとします。
それなら、恋愛+人気俳優+大事件+どんでん返しを全部入れればいいように思えます。
でも、本当に「良いものを集めること」と「良い作品を作ること」は同じなのでしょうか。
人気の目や鼻を集めればイケメンになる?
ここで、人の顔に置き換えて考えてみましょう。
・一番人気の目
・一番人気の鼻
・一番人気の口
・一番人気の輪郭
これらを全部集めて一つの顔にしたら、必ず一番格好よくなるでしょうか。
おそらく、そう簡単にはいきません。 顔の印象は、パーツ一つひとつだけではなく、目と鼻の距離や大きさ、位置、輪郭との組み合わせなど、全体のバランスで決まります。
ドラマや映画も同じです。 人気の俳優、人気の設定、人気の展開を並べても、それだけで面白い作品になるとは限りません。
感動する場面には、その前がある
たとえば、主人公と大切な人が別れる場面があったとします。
その場面だけを突然見せられても、私たちはそれほど感動しないでしょう。
その前に、一緒に食事をしたり、何気ない会話をしたり、けんかをしたり、仲直りをしたりする時間を見ているからこそ、別れが心に響きます。
つまり、強い場面を作っているのは、その前にある地味な場面かもしれないということです。
どんでん返しも同じです。 最後の驚きだけでは面白くありません。それまでに伏線が積み重なっているからこそ、「そういうことだったのか」と驚けます。
「全部サビ」の曲を想像してみる
音楽で考えると、さらに分かりやすいでしょう。
曲の中で一番印象に残るのはサビです。
では、サビが人気なら、最初から最後まで全部サビにすれば最高の曲になるのでしょうか。
たぶん、聞いていて疲れてしまいます。
Aメロがあり、Bメロがあり、少しずつ盛り上がるからこそ、サビが気持ちよく聞こえます。
ドラマも同じです。
盛り上がりには、その前の「溜め」が必要です。
反応の良い場面だけを集めると、かえって作品全体が単調になることもあります。
「失敗しない作品」と「名作」は同じ?
AIは、大量の過去データから、以下の傾向を見つけるのが得意です。
「このタイプの主人公は人気が出やすい」
「この展開は評価されやすい」
これは作品づくりの大きなヒントになります。
ただし、AIが参考にするのは、基本的にはこれまでに集められたデータです。
つまり、過去に何が成功したのかを見つけるのは得意です。
ところが、まだ誰も作ったことのないものが成功するかどうかは、過去のデータだけでは分かりません。 過去の成功例ばかりを追いかけると、似た作品が増える可能性もあります。
大きく外さない作品は作りやすくなるかもしれません。
でも、失敗しない作品と、何年たっても心に残る作品は同じなのでしょうか。
名作には、ときどき普通なら削られそうな部分があります。
・長い沈黙
・変わった主人公
・すぐには意味が分からない場面
そうした部分が、その作品だけの魅力になっていることもあります。
AIは答えではなく、ヒントとして使う
だからといって、AIを作品づくりに使わない方がいいという話ではありません。
AIから、
「こういう傾向があります」
「この部分で視聴者の反応が変わっています」
と教えてもらう。
そのうえで人間が、
「それでもこの場面は必要だ」
「ここはあえてゆっくり見せよう」
「今回は今までと違うことをやってみよう」
と判断する。
AIに正解を決めてもらうのではなく、人間が考えるための材料として使うことが大切です。
良いものを集めるだけでは、良い作品にはならない
AIによって、これまで見えなかったことが数字で分かるようになっていきます。
それは作品づくりにとって、大きな武器になるでしょう。
でも、人気の目+人気の鼻+人気の口=最高の顔 になるとは限りません。
同じように、人気の俳優+人気の場面+人気の展開=最高の作品 とも限りません。
作品の魅力は、一つひとつの要素ではなく、それらがどうつながり、どんな流れを作るのかによって生まれます。 AIが「何が人気なのか」を教えてくれる時代だからこそ、その情報をどう使うのかを考える人間の力が、これまで以上に大切になっていくのではないでしょうか。



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