富士通がOpenAI、そしてAnthropicと業務提携を発表したニュースが話題になっています。
最近は生成AI関連のニュースが非常に増えていますが、今回のニュースは単なる「AIを導入します」という話ではありません。
むしろ、日本のIT業界、特にSIer(エスアイヤー)の役割そのものが変わり始めているのではないか。そんな空気を感じるニュースでした。 そして今回、個人的に特に気になったのは、もう一つあります。
それは、「なぜ富士通は“国産AI”ではなく、OpenAIやAnthropicと提携したのか?」という点です。
今回は、
・そもそもSIerとは何なのか
・今までどんな仕事をしてきたのか
・AI時代に何が変わるのか
・なぜ海外AI企業と提携したのか
このあたりを整理しながら、今回のニュースを深掘りしてみたいと思います。
そもそもSIerとは?
まず、「SIerって何?」という人も多いと思います。
SIerとは、「システムインテグレーター」の略です。
簡単に言えば、「企業向けシステムを作って導入し、運用する会社」です。
例えば、銀行システム、工場の管理システム、病院の予約システム、企業の勤怠管理、物流管理システムなど、社会を支えるシステムの多くにSIerが関わっています。
システム開発には、以下のようなたくさんの工程があります。
・企画
・要件定義
・設計
・プログラム開発
・テスト
・導入
・運用保守
その中でSIerは、企業の要望を聞きながら、全体をまとめてシステムとして形にしていく役割を担ってきました。
今までのSIerの仕事の流れ
従来のSIerの仕事は、かなり「プロジェクト型」でした。
企業から案件を受ける。
その後、
・SE(システムエンジニア)
・プログラマー
・インフラ担当
などでチームを組みます。
そして数か月〜数年かけてシステムを開発。
完成したらリリース。
リリース後は保守チームだけ残して、開発チームは解散。
また次の案件へ向かう。
そんな流れが一般的でした。
つまり、「システムを作って納品する」という色がかなり強かったわけです。
もちろん運用保守もありました。 ただ、それでも中心は“開発”だったんですよね。
なぜ「国産AI」ではないのか
ここが今回かなり気になったポイントです。
富士通ほどの大企業がAIを進めるなら、「日本製AIを使うのでは?」と思った人も多いはずです。
しかし実際には、OpenAIとAnthropicという、アメリカ企業との提携でした。
なぜなのか。 理由はいくつか考えられます。
まず単純に、現時点ではOpenAIやAnthropicが世界トップクラスの性能を持っていること。
生成AIは現在、ものすごい速度で進化しています。
特に大規模言語モデルは、開発費、GPU性能、学習データ、研究者数など、莫大なリソースが必要です。 そのため、世界規模で見ると、現時点ではアメリカ企業がかなり先行しています。
もう一つは、「企業が求めるレベル」が非常に高いことです。
企業利用では、精度、安全性、セキュリティ、説明性、安定稼働などが求められます。
つまり、「ちょっと便利」ではダメなんです。
特に富士通のような企業は、金融、インフラ、医療、官公庁など、止まると困る領域を多く扱っています。 だからこそ、現時点で実績のある海外AIを活用しながら、日本企業向けに最適化していく戦略を選んだのではないかと思います。
今回の提携で何が変わるのか
今回、富士通はOpenAIとAnthropicの両方と提携しました。 これが非常に興味深い部分です
OpenAIだけではない。 Anthropicだけでもない。 両方です。
これはつまり、「AIをどう業務に組み込むか」が重要になってきているということだと思います。
今までは企業ごとにゼロからシステムを作る部分が多かった。
でもこれからは、ChatGPT、Claude、各種AIモデルという“共通AI基盤”を使いながら、企業ごとに最適化していく方向へ変わっていく可能性があります。
つまり、「全部オリジナルで作る」から、「共通AIをどう活かすか」へ変わっていくわけです。
AIは「導入して終わり」ではない
ここがかなり重要だと思っています。
AIって、入れたら完成ではありません。
むしろ、「導入後からが本番」なんですよね。
例えば、
・社員がどう使うか
・誤回答をどう減らすか
・どの業務に任せるか
・業務フローをどう変えるか
・教育をどうするか
こういった調整が大量に発生します。
つまりAI時代になると、「開発して終わり」ではなく、
「運用しながら改善し続ける」ことが重要になる。
これはかなり大きな変化です。
顧客との距離が今まで以上に近くなる
今までは、「システムを作って納品」という距離感がありました。
でもAI時代は、「一緒に業務改善する」に近づいていく感じがあります。
実際、富士通は「FDE(フォワード・デプロイド・エンジニア)」という形で、顧客企業の現場に深く入り込むような動きを見せています。
簡単に言えば、「お客さんのところで一緒に仕事をする」イメージです。
これは従来のSIerとはかなり違います。
企業の中に入り込み、
・どうAIを使うか
・どこを改善するか
・どう業務を変えるか
を、一緒に考えていく。
単なるシステム会社というより、「AI変革パートナー」に近づいているように感じます。
下請け構造はどうなるのか
ここはかなり気になる部分です。
今までのIT業界は、
大手SIer
↓
二次請け
↓
三次請け
のような構造がありました。
案件ごとに人を集め、開発して、終わったら解散。 そんな流れも多かったです。
でもAI時代になると、「長期運用型」へ変わる可能性があります。
つまり、「短期開発案件を大量に回す」より、「継続的に企業と伴走する」方向です。
そうなると、大手企業だけが強くなり、下請け企業に仕事が流れにくくなる可能性もあります。
一方で、
・AI運用
・業務改善
・教育
・データ整備
・現場定着支援
など、新しい仕事も増えるはずです。
つまり、「単純な開発作業」だけでは厳しくなる一方、「AIを現場で使える形にする力」を持つ企業には、新しいチャンスが来るかもしれません。
まとめ
今回の富士通のニュースは、単なるAI導入の話ではなく、「SIerそのものの変化」を感じさせるニュースでした。 今までは、「作って納品する」が中心でした。
でもこれからは、「AIを使いながら、企業と一緒に改善し続ける」方向へ変わっていく可能性があります。 そしてそれは、働き方、下請け構造、運用保守、企業との距離感、こういったものまで変えていくかもしれません。
AI時代に求められるのは、「システムを作れる会社」だけではなく、「AIを使って企業と一緒に変化し続けられる会社」なのかもしれません。


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