ローカルAIでサイバー攻撃に挑む|Aikido Securityが急成長する理由

AIと未来

2026年9月21日、ベルギーのサイバーセキュリティ企業「Aikido Security」が、新しいAIモデル「Aikido Altar」を発表しました。 特徴は、企業の大切なソースコードを外部のAIサービスへ送らず、自社の環境でAIを動かせることです。 AIによってサイバー攻撃が高度化するなか、防御する側もAIを使おうという動きが広がっています。 ところで、Aikido Securityとはどんな会社なのでしょうか。 名前を見て「合気道と関係あるの?」と思った人もいるでしょう。 実はその疑問、かなり本質を突いています。

Aikido Securityとは

Aikido Securityは、2022年にベルギーで創業したサイバーセキュリティ企業です。 まだ創業から4年ほどしかたっていません。 主に、ソフトウェアを作る企業やエンジニア向けにセキュリティサービスを提供しています。 プログラムのソースコードだけでなく、クラウド、コンテナ、実際に動いているシステムなどをまとめてチェックし、危険な部分を見つけます。 同社が掲げているのは、「開発者が使いやすいセキュリティ」です。

これまでのセキュリティ製品には、ある問題がありました。
 ☛ 警告が多すぎる
 ☛ 誤検知が多い
 ☛ 何を優先すればよいのか分かりにくい
 ☛ 複数の製品を使い分けなければならない

Aikidoの創業者自身も、こうした問題に悩んでいたと説明しています。
そこで「もっと簡単にできないか」と考えたのが、Aikidoの始まりです。

なぜ名前がAikidoなのか

日本人として気になるのが、この社名です。 Aikidoとは、もちろん日本の武道「合気道」のことです。 共同創業者のRoeland Delrue氏は、創業時に「合気道のように、できるだけ少ない力で攻撃者から身を守る」という意味を込めたと説明しています。
 ☛ 力任せに戦うのではなく、効率よく守る。
 ☛ 大量の警告を人間が一つずつ確認するのではなく、本当に危険なものを見つけて対処する。
確かにAikidoという名前は、この会社の考え方に合っています。

創業4年でなぜ急成長したのか

では、歴史の浅い会社が、なぜこれほど急成長したのでしょうか。 Aikidoは2026年1月、6000万ドルの資金調達を実施しました。 このとき企業価値は10億ドルに達し、いわゆるユニコーン企業となりました。 さらに前年には、売上が約5倍、顧客数が約3倍に増えています。 理由の一つは、まったく新しい問題を発見したからではありません。 むしろ逆です。
みんなが以前から困っていた問題を、分かりやすく解決したことが大きかったのです。
従来は、コードの検査 ➾ オープンソースの確認 ➾ クラウドの監視 ➾ コンテナの監視 ➾ 実行中のシステムの監視と、複数のセキュリティ製品を組み合わせるケースがありました。

Aikidoはこれらを一つのプラットフォームに集約しました。

つまり、「すごい新技術を発明したから売れた」というより、「複雑だったものを簡単にしたから選ばれた」という面が大きいのです。

AI時代も追い風になった

もう一つ大きいのが、生成AIの普及です。 AIを使えば、プログラムを書く速度は上がります。 しかしコードが増えれば、チェックしなければならない量も増えます。 AIで開発が速くなる ➾ 作られるコードが増える ➾ セキュリティチェックも増えるということです。 人間だけですべて確認するのは、だんだん難しくなります。 だからこそ、セキュリティ側にもAIや自動化が必要になる。

Aikidoが急成長した背景には、こうした時代の変化もあります。

なぜローカルAIなのか

ここで、冒頭のニュースに戻ります。 AIにソースコードを調べてもらえば、脆弱性を見つける作業を効率化できます。 しかし問題があります。
サイバーセキュリティで扱うのは、
 ☛ 企業のソースコード
 ☛ システム構成
 ☛ 脆弱性情報
 ☛ 社内ネットワークに関する情報

など、外部へ出したくないものばかりです。

そこで出てくるのがローカルAIです。
AIは使いたい ➾ 機密情報は外に出したくない ➾ ならば自社環境でAIを動かすという発想です。
Aikidoが発表したAltarは、まさにこの需要を狙ったAIモデルです。

攻撃側も防御側もAIを使う

これからのサイバーセキュリティを考えるうえで、さらに重要なことがあります。
AIを使うのは、防御する側だけではありません。 攻撃する側もAIを使えます。 AIを使って大量のプログラムを調べ、弱点を探すことも可能になります。 そうなると、攻撃側がAIを使う ➾ 防御側もAIを使う ➾ AI同士の攻防になるという世界に近づいていきます。
Aikidoの登場は、その変化を象徴しているのかもしれません。

急成長の秘密は意外とシンプル

Aikidoは2022年創業の若い会社です。 それでも短期間でユニコーン企業になりました。 その理由を整理すると、意外とシンプルです。 現場の困りごとを見つける ➾ 複雑だったものを簡単にする ➾ 時代の変化に合わせてAIを取り入れる

まったく新しいものをゼロから発明するだけが、イノベーションではありません。 すでに存在する「面倒」をなくすことも、大きな価値になります。 そして今回のニュースからは、もう一つの変化も見えてきます。

これからAIを選ぶときは、「どのAIが一番賢いのか」だけではなく、「そのAIをどこで動かすのか」も重要になっていくでしょう。 Aikido Securityは、サイバーセキュリティという機密性の高い分野で、その未来を一足早く見せている会社なのかもしれません。

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