AI時代に必要なのは「答える力」ではない|これから重要になる課題設定力

AIと未来

2026年10月現在、生成AIは文章作成や資料作成、画像生成、プログラミングなど、さまざまな仕事で使われるようになっています。 「AIを使えば仕事が速くなる」これは確かです。 しかし最近、AIについて考えていて、私は一つ気になることがあります。 仕事が速くなれば、本当に仕事の価値も上がるのでしょうか。 どうやら、そう単純ではなさそうです。

AIは答えを出すのがものすごく速い

たとえば、あるお店の売上が落ちているとします。
そこで店長から、「SNSをもっと活用したい。投稿案を考えて」と言われたとしましょう。
生成AIに頼めば、「若者向けの投稿を10本作って」「商品の魅力が伝わる文章にして」「Instagram用の企画を30個考えて」といった仕事は、あっという間にできます。

これは便利です。 でも、ここで一つ考えてみてください。 そもそも売上が落ちた原因は、本当にSNSなのでしょうか。 来店客が減ったのかもしれません。 一人あたりの購入金額が下がったのかもしれません。 一度来たお客さんが、二度目は来なくなったのかもしれません。

もし原因が「リピーターの減少」だったら、SNS投稿を100本作っても問題は解決しない可能性があります。 AIは一生懸命仕事をしているのに、成果につながらない。 これがAI時代に起こり得る、「速いけれど的外れ」という問題です。

大切なのは「何を解くか」

AIが登場する以前は、資料を作ったり、文章を書いたり、データを整理したりすること自体にかなりの時間が必要でした。 ところがAIは、この「作業」の部分を急速に効率化しています。 だからこそ、その一つ前が重要になります。 「そもそも何をやるべきなのか」これを決める力です。

たとえば会社で、「問い合わせが多すぎる。AIチャットボットを導入しよう」という話が出たとします。 一見すると、いかにもAI時代らしい解決策です。 ところが問い合わせ内容を調べたところ、60%が「商品の使い方が分からない」という質問だったらどうでしょう。

それならチャットボットを導入する前に、
「説明書が分かりにくいのでは?」
「Webサイトの説明に問題があるのでは?」
「購入時の案内を変えればいいのでは?」
と考えることもできます。

つまり、「チャットボットを導入する」は解決方法であって、課題そのものではないのです。
こうして「本当は何を解決すべきなのか」を見つけることを、ここでは課題設定と呼びます。

学校では「問題を解く」練習が多い

ここで教育について考えてみましょう。 学校では、「次の問題を解きなさい」「正しいものを選びなさい」「答えを求めなさい」という勉強をたくさんします。 つまり、問題は最初から誰かが用意してくれているわけです。 ところが社会に出ると違います。

「売上が落ちた」「残業が多い」「お客様から苦情が増えた」 こうした状態から、「なぜ?」を考えなければなりません。

しかも一回ではありません。「なぜ売上が落ちた?」「来店客が減ったから」「では、なぜ来店客が減った?」「新規客は変わらないけれど、リピーターが減っている」ここまで来ると、最初の「売上を上げよう」とは違う課題が見えてきます。

「なんとなく」ではなく数字で見る

そして課題を見つけるときに重要なのが、数字です。 「最近、お客さんが減った気がする」ではなく、新規客は何人減ったのか、リピーターは何%減ったのか、いつから変化したのか、こうして分けて考えると、本当の問題が見えやすくなります。

もちろん、この分析にもAIは使えます。 大量のデータを整理したり、グラフにしたり、原因の候補を出してもらったりするのはAIの得意分野です。

つまり、「AIに考えさせない」のではありません。 人間が問いを立て、AIと一緒に調べ、結果を見て、また問い直す。 そんな使い方が重要になるのだと思います。

子どもたちにも「問いを作る練習」を

私は専門学校で、これから社会に出ていく学生たちを教えています。 AIの使い方を教えることは、もちろん必要です。 しかし、それだけでは足りないと感じています。

AIに質問する前に、「何が問題なんだろう?」「なぜこうなっているんだろう?」「どこを変えれば一番良くなるんだろう?」と考える習慣も身につけてほしい。 これは大学生や社会人になって突然始める必要はありません。小学生や中学生でも、身近な問題を題材にして練習できます。

AI教育というと「上手なプロンプトの書き方」に目が向きがちですが、その前に「何をAIに考えてもらうのか」を自分で考える力が必要なのではないでしょうか。

AIが賢くなるほど人間の「問い」が重要になる

これからAIは、さらに賢くなるでしょう。 文章を書く。資料を作る。データを分析する。プログラムを書く。 これまで人間が時間をかけていた「答えを作る仕事」は、ますますAIが手伝ってくれるようになります。 だから人間がAIと答えを出す速さで競争する必要はありません。

むしろ重要になるのは、何が問題なのかを見つける → 何を解くべきか決める → AIに手伝ってもらう → 結果を見てもう一度考えるという力です。 AIに答えを出してもらう力だけではなく、「AIに何を考えてもらうべきか」を考える力。 これからのAI教育では、この「課題設定力」も大切なテーマになっていくのではないでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました