災害時に5Gがつながらないのはなぜ?|Wi-Fiなら使える理由を解説

ITリテラシー・スキル

2026年9月8日、名古屋市では線状降水帯による記録的な大雨となりました。
名古屋地方気象台では、16時53分までの1時間に104.5mmという猛烈な雨を観測。1890年からの観測史上1位を更新しました。公共交通機関にも大きな影響が出て、名古屋市は名古屋駅や金山駅、伏見駅、栄駅周辺で帰宅が難しくなった人のために退避施設を開設しました。

実は私の娘も、この豪雨で名古屋市内に取り残された一人です。
そのとき困ったのが、スマートフォンの通信でした。
画面には「5G」と表示されているのに、ほとんど通信できず、こちらからも連絡が取れません。
ところが、近くのスターバックスに入り、フリーWi-Fiに接続すると、インターネット経由で連絡できるようになりました。
「5Gはつながらないのに、なぜWi-Fiなら使えるの?」
今回は、この仕組みをできるだけ分かりやすく説明します。

「5G」と表示されていてもネットが使えるとは限らない

まず知っておきたいのが、
スマホに5Gと表示されている = インターネットが正常に使える
とは限らないということです。
5Gで通信するときは、大まかに次のような経路を通ります。
スマホ ➾ 携帯電話の基地局 ➾ 携帯電話会社のネットワーク ➾ インターネット
スマホに5Gと表示されている場合、少なくとも基地局から5Gの電波を受けている状態ではあります。
しかし、その先の通信が混雑したり、設備に障害が起きたりすれば、インターネットには正常につながりません。
道路に例えるなら、自宅から高速道路の入口までは行けるけれど、その先が大渋滞しているような状態です。 そのため、アンテナが立っていて5Gと表示されていても、LINEが送れない、Webサイトが開かない、といったことは起こります。

災害時に起こりやすい「輻輳」とは

災害時に考えられる大きな原因の一つが、輻輳(ふくそう)です。
簡単に言えば、通信の大渋滞です。
大雨や地震が発生すると、多くの人が一斉にスマートフォンを使い始めます。
「家族は大丈夫?」
「電車は動いている?」
「どこまで浸水している?」
「雨雲はいつ抜ける?」
こうした情報を調べるために、LINE、SNS、ニュース、Googleマップ、雨雲レーダーなどへのアクセスが急増します。 災害が酷くなると公共交通機関が止まり、駅周辺などに多くの人が滞留します。 今回の件も、ウェザーニューズの位置情報分析によると、名古屋駅などで通常より多くの人が滞留していたことが確認されています。
一つの基地局で処理できる通信量には限界があります。 そこへ利用者が一気に集中すれば、スマートフォンと基地局との電波がつながっていても、その先の通信が非常に遅くなったり、ほとんど使えなくなったりすることがあります。 これが輻輳です。

大雨では基地局そのものが影響を受けることもある

もう一つ考えられるのが、携帯電話設備への被害です。
大雨になると、
・基地局が停電する
・基地局につながる通信回線が故障する
・一部の基地局が停止し、残った基地局へ利用者が集中する
といったことが起こる可能性があります。
実際、2026年8月の別の大雨災害では、KDDIが携帯電話サービスを利用できなくなった原因として、「大雨に伴う基地局の停電」や「基地局までの伝送路の故障」を公表しています。 NTTドコモでも、大雨による停電や基地局までの伝送路の故障によって、4G・5Gが利用しづらくなった事例があります。 ただし、今回娘のスマートフォンが通信できなかった直接の原因が、輻輳だったのか設備障害だったのかは、現時点では断定できません。
重要なのは、災害では「電波が届いているか」以外の理由でもスマートフォンが使えなくなるということです。

なぜスタバのWi-Fiなら使えたのか

では、なぜスターバックスのWi-Fiでは通信できたのでしょうか。
理由は比較的単純です。
携帯電話の5Gとは別の道を通ってインターネットにつながるからです。
Wi-Fiの場合は、おおむね次のような経路になります。
スマホ ➾ 店内のWi-Fiアクセスポイント ➾ 店舗側のインターネット回線 ➾ インターネット
つまり、携帯電話会社の5G基地局を使わず、別の通信経路からインターネットへ出ることができます。

携帯電話網が混雑していても、店舗側のWi-Fiとその先の回線が正常に動いていれば、LINEやWebなどを利用できる可能性があります。 実際、携帯電話会社も大雨による通信障害時には、データ通信について自宅のWi-Fiや公衆Wi-Fiなどを利用するよう案内することがあります。
今回、娘がスターバックスのWi-Fiを利用して連絡できたのは、まさに別の通信ルートが生きていたからだと考えられます。

「大雨だから5Gの電波が雨に遮られた」の?

「ものすごい雨だったから、5Gの電波が雨に負けたのでは?」と思う人もいるかもしれません。
確かに、電波は周波数によって雨の影響を受けます。 特に非常に高い周波数を利用する通信では、雨による電波の減衰も無視できません。
ただし、一般的なスマートフォンの5G通信が災害時に使えなくなったからといって、すぐに「雨が5Gの電波を遮った」と考えるのは正確ではありません。 災害時には、利用者の急増による輻輳、停電、基地局や通信回線の障害など、さまざまな原因が考えられるからです。

災害時は「5Gがダメなら終わり」ではない

今回の出来事で改めて感じたのは、災害時には通信手段を一つだけに頼らないことの大切さです。
スマートフォンがつながらなくなった場合でも、
・Wi-Fiを探す
・4Gへ切り替えてみる
・別の通信会社の回線を利用する
・公衆電話や固定電話を利用する
・災害用伝言板を利用する
など、別の方法があります。
特にカフェ、ホテル、駅、避難施設などでWi-Fiが利用できることを知っているだけでも、いざというときの選択肢は増えます。 もちろん、災害時に危険な場所を移動してまでWi-Fiを探すべきではありません。 まずは安全を確保することが最優先です。

まとめ|ITの知識は防災にも役立つ

普段は、スマートフォンがあればいつでも家族と連絡できると思ってしまいます。
しかし災害時には、5Gの表示が出ていても通信できないということがあります。
基地局へのアクセス集中による輻輳や、停電、通信設備の故障などが原因になるためです。
一方、Wi-Fiは携帯電話網とは別の経路を使うため、携帯電話がつながらない状況でも利用できる場合があります。
「5GがダメならWi-Fiを試してみる」
これは小さなIT知識ですが、災害時には家族と連絡を取るための大切な知識になるかもしれません。
ITリテラシーは、仕事や勉強のためだけではなく、防災にも役立つ。
今回の豪雨を通して、改めてそう感じました。

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