AIで会社の組織図が変わる?|「偉くなるほど現場から離れる」が崩れ始めた

AIと未来

AIというと、「どんな仕事がなくなるのか」「人間の仕事がAIに奪われるのではないか」といった話が注目されがちです。 しかし、AIが変えるのは仕事の数だけではないのかもしれません。
最近のスタートアップ企業では、ファウンダー、つまり創業者自身がAIを使いながらコードを書くケースが増えているという話もあります。

注目したいのは、単に「社長もAIを使うようになった」ということではありません。 これまで会社では当たり前だった、「偉くなるほど現場から離れる」という構造が変わる可能性があることです。

これまでの会社は「成長するほど分業」が当たり前だった

小さな会社では、創業者自身が顧客と話し、商品を考え、営業をして、場合によっては自分でプログラムを書くこともあります。 しかし会社が大きくなると、一人ですべてを担当することはできません。
営業は営業、企画は企画、開発は開発。管理職は社員を管理し、経営者は会社全体の方向性を考えます。 つまり会社は、成長するほど仕事を細かく分けてきました。

これは悪いことではありません。 一人の人間ができる仕事には限界があるため、会社を大きくするには分業が必要だったからです。 その結果、役職が上がるほど、実際に手を動かす現場からは離れていくのが一般的になりました。

AIが「自分でちょっと作ってみる」を可能にした

ところが生成AIの登場によって、この前提が少し変わってきました。 たとえば経営者が「こんなサービスを作ったら面白いのでは」と思いついたとします。 これまでは、そのアイデアを企画担当者やエンジニアに説明し、仕様を決め、試作品を作ってもらう必要がありました。

しかし現在は、AIに自然な言葉で指示しながら、簡単なプログラムや試作品を作ることができます。
もちろん、AIを使えば誰でも本格的なシステムを完成させられる、という意味ではありません。
大きく変わったのは、専門家に頼む前に、自分で試してみることが簡単になったことです。
これまでは、考える ➾ 誰かに説明する ➾ 作ってもらう ➾ 確認するという流れでした。

それがAIを使えば、考える ➾ AIで作ってみる ➾ 実際に動かす ➾ 専門家と改善するという進め方もできます。 つまり、「考える人」と「作る人」の距離が縮まるわけです。

「社長がプログラマーになる」という話ではない

ここで誤解してはいけないのは、経営者がエンジニアの仕事まで全部やればいい、という話ではないことです。 本格的なシステム開発には、セキュリティや品質管理、運用など専門的な知識が必要です

変わるのは、「ここから先は別の人の仕事」という境界です。 経営者はアイデアを考えるところまで。企画担当者は仕様をまとめるところまで。エンジニアは作るところから。
これまで分かれていた仕事の一部を、AIを使うことで同じ人が担当できるようになります。

そうなると、会社の中で何段階も人を通して仕事を進める必要も少なくなる可能性があります。

FDEが注目されるのも同じ流れ

最近では「FDE」という言葉も登場していました。
FDEとは「Forward Deployed Engineer」の略です。 簡単にいえば、顧客の現場に深く入り、そこで起きている問題を理解しながら、必要なシステムまで作っていくエンジニアです。

従来なら、
 顧客の話を営業が聞く
  ↓
 社内に持ち帰る
  ↓
 企画や設計をする
  ↓
 エンジニアが開発する

というように仕事が分かれていました。

FDEは、この距離を縮めます。
つまり、「課題を理解する人」と「実際に作る人」を近づける働き方です。
AIによって開発の速度が上がるほど、こうした役割はさらに重要になっていく可能性があります。

作るのが簡単になるほど「何を作るか」が重要になる

AIがプログラムを書いてくれるなら、これからは誰でも簡単にシステムを作れるのでしょうか。
実は、ここに別の難しさがあります。 AIに「会社に役立つシステムを作って」と頼んでも、それだけでは良いものはできません。

人間が、「何が問題なのか」「誰が困っているのか」「どうなれば解決なのか」「どんな機能が必要なのか」を決めなければならないからです。

システム開発でいえば、要件定義や設計にあたる部分です。 AIによって「作ること」のハードルが下がるほど、逆に「何を作るのかを決める力」の重要性は高くなると考えられます。

AIは「人」より「人と人の間」を減らすのかもしれない

AIによる会社の変化というと、「10人でやっていた仕事を5人でできるようになる」といった人員削減を想像しがちです。 もちろん、そうした変化が起こる可能性もあります。
しかし、別の見方もできます。 AIが減らすのは、人そのものではなく、人と人の間にあった工程なのかもしれません。 経営者から管理職へ。管理職から企画担当へ。企画担当から開発担当へ。
これまで何段階も人を通して伝えていたアイデアを、AIを使ってその場で試せるようになる。
そうなれば、会社はこれまでほど細かく役割を分けなくてもよくなる可能性があります。

私たちはどう使えばいいのか

これから重要になるのは、単に「AIが使える」ことではありません。
課題を見つける → 解決方法を考える → AIで試す → 結果を判断する → 改善する
という流れを自分で回せることです。 これはエンジニアだけの話ではありません。
営業でも、事務でも、教育でも、現場をよく知っている人自身がAIを使って解決策を試せるようになります。

これから価値が高まるのは、単にAIに詳しい人ではなく、自分の仕事をよく知り、AIを使って自分で試せる人なのかもしれません。

まとめ

AIについて考えるとき、私たちは「どの仕事がなくなるのか」に目を向けがちです。
しかし、もっと大きな変化は、仕事そのものではなく仕事と仕事の境界に起きるのかもしれません。
経営する人と作る人。企画する人と開発する人。顧客と話す人とシステムを作る人。
これまで会社は、こうした役割を分けることで成長してきました。

ところがAIは、その境界を少しずつ曖昧にし始めています。
「誰が考え、誰が作り、誰が判断するのか」。
AI時代には、会社の組織そのものが、これまでとは違う形に変わっていくのかもしれません。

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