スマートフォンがあれば、ほとんどの人はきれいな写真を撮れます。
撮影 ➾ 編集 ➾ SNSへの投稿まで、スマホ1台でできます。
それなら、わざわざデジタルカメラを買う必要はないようにも思えます。
実際、デジタルカメラ市場はスマートフォンの普及によって一度大きく縮小しました。
ところが最近、その流れに少し変化が起きています。
2025年の世界のデジタルカメラ出荷台数は約944万台となり、前年より11.2%増えました。
日本の実売データでも、2025年のデジタルカメラ販売台数は前年比114.8%。特にコンパクトデジカメは127.4%まで伸びています。 スマホに押されて消えていくと思われたデジカメに、何が起きているのでしょうか。
スマホによって市場は大きく縮小した
2000年代には、旅行や学校行事にデジタルカメラを持っていくのは珍しくありませんでした。
特に人気だったのが、小さくて持ち運びやすいコンパクトデジカメ、いわゆる「コンデジ」です。
しかし、スマートフォンのカメラ性能が上がると状況が変わります。
「普段の写真ならスマホで十分」という人が増えたのです。
コンデジとスマホは、どちらも「気軽に写真を撮る」という役割が重なっています。
そのため、デジカメ市場は2010年前後をピークに急速に縮小しました。

このグラフを見ると、市場が大きく成長 ➾ スマホ普及で急減 ➾ 最近は下げ止まりから回復という流れが一目で分かるようにしたいところです。
今の主役はミラーレスカメラ
もちろん、昔と同じ市場に戻ったわけではありません。 本格的なカメラの中心は、一眼レフからミラーレスへ移っています。

ミラーレスは比較的小型・軽量でありながら高画質で、写真だけでなく動画撮影にも強いのが特徴です。 2025年の世界市場でも、レンズ交換式カメラの大部分をミラーレスが占めています。 つまりデジカメは、「写真だけを撮る機械」から、写真や動画を本格的に楽しむための道具へと変化してきたのです。
意外にもコンデジが再び伸びている
さらに面白いのが、一番スマホの影響を受けたはずのコンデジです。
2025年の国内販売台数は前年比127.4%。 BCN総研は、その背景の一つとして、SNSから広がった若い世代のレトロブームを挙げています。 2026年上半期の売れ筋でも、KODAKのコンデジが上位に入っています。
ここで興味深いのは、必ずしも「スマホより性能が高いから買う」だけではないことです。 若い世代にとっては、少し昔のデジカメらしい写りや、カメラを構えて撮影すること自体が新鮮なのです。

スマホとは違うから価値がある
以前は、スマホ VS デジカメという関係でした。
しかし現在は少し違います。
☛ 日常の写真はスマホ
☛ 本格的な写真や動画はミラーレス
☛ 独特の雰囲気を楽しむならコンデジ
このように使い分けることができます。
つまり、デジカメはスマホと同じことをして競争する必要がなくなったのです。
むしろ、スマホとは違う体験ができることそのものが価値になっています。
「たくさん売る市場」から「価値で選ばれる市場」へ
現在のデジカメ市場は、かつてのように誰もが1台持つ巨大市場ではありません。
写真を撮るだけなら、スマホで十分です。 それでも、「もっときれいに撮りたい」「遠くのものを撮りたい」「スマホとは違う写真を撮りたい」「撮影そのものを楽しみたい」という人はカメラを選びます。 つまりデジカメは、必要だから買う商品 ➾ 欲しいから買う商品へ変わったとも考えられます。
まとめ
スマートフォンの登場によって、デジタルカメラ市場は一度大きく縮小しました。 しかし、デジカメそのものがなくなったわけではありません。 ミラーレスは高画質な写真や動画を楽しむ道具として定着し、コンデジには若い世代から新しい注目が集まっています。
ここから分かるのは、便利な商品が登場しても、古い商品が必ず消えるとは限らないということです。 便利さではスマホにかなわない。 だからこそ、「スマホでは得られない価値を作る」デジタルカメラ市場の変化は、商品の生き残り方を考えるうえでも面白い例なのです。



コメント