アメリカで開催されている検索マーケティングの国際カンファレンス「SMX Advanced」では、検索やデジタルマーケティングの専門家が集まり、最新の技術や実践事例が共有されています。
これまでは、Google検索で上位表示するためのSEO施策が中心に語られてきました。しかし近年は、生成AI、デジタルPR、SNS、動画、ブランド戦略など、話題が大きく広がっています。
今回紹介された現地の様子でも、中心となっていたのは従来のSEOだけではありませんでした。
特に注目されていたのが、AI上で企業やサービスがどれだけ見つけてもらえるかを考える「AI Visibility」という視点です。
AI検索では「見つかる」だけでは足りない
これまでのWeb集客では、Google検索で上位に表示され、自社のホームページをクリックしてもらうことが重視されてきました。 しかし、ChatGPTやGeminiなどの生成AIが普及したことで、利用者の行動は変わり始めています。
以前であれば、検索結果から複数のページを開き、自分で情報を比較していました。
現在は、
「初心者が動画編集に使うなら、どのパソコンがおすすめですか」
「費用を抑えながら利用できるサービスはどれですか」
とAIに条件を伝えれば、候補や違いをまとめて提示してくれます。
利用者は、検索結果の中から情報を探すだけでなく、AIの回答を参考にしながら、商品やサービスを選ぶようになっているのです。
AIは「回答エンジン」から「意思決定エンジン」へ
AI検索の重要な変化は、単に質問へ答えるだけではないことです。
AIは利用者の希望や予算、利用目的などを整理し、複数の選択肢を比較します。
そのうえで、「この条件なら、こちらが向いています」と判断を支援します。
つまりAIは、情報を提示する「回答エンジン」から、利用者の選択を助ける「意思決定エンジン」へ変わりつつあります。
企業にとっては、自社の商品やサービスがAIの回答に含まれるかどうかが、問い合わせや購入に影響する可能性があります。 検索順位だけを見ていればよかった時代から、AIにどのように認識され、紹介されているかも考える時代になったのです。
ブログだけでは信頼をつくれない
AIは、企業の公式ホームページやブログだけを参考にしているわけではありません。
ニュース記事、SNS、動画、口コミ、プレスリリース、専門家の発言、利用者の評価など、さまざまな場所にある情報から、その企業やサービスを判断します。
そのため、良い記事を作るだけでは十分ではない場合があります。
例えば、ホームページには優れた説明が書かれていても、外部からほとんど言及されていなければ、企業の実績や評判は伝わりにくくなります。 反対に、ニュースや専門メディアで紹介され、SNSや動画でも継続的に情報が発信されていれば、「この分野でよく知られている企業」として認識されやすくなります。
これからはSEO、SNS、動画、広報を別々に考えるのではなく、インターネット全体で信頼を積み上げることが重要になります。
SEO担当者の役割も広がっている
こうした変化により、SEO担当者の仕事も変わり始めています。 これまでは、検索キーワードを調べ、記事を作成し、検索順位やアクセス数を確認する仕事が中心でした。
しかしAI検索では、記事の改善だけでなく、
・SNSでどのように発信するか
・外部メディアで紹介されているか
・動画や画像でも情報を届けているか
・利用者からどのような評価を受けているか
・企業や発信者の専門性が伝わっているか
といった点まで考える必要があります。 「Googleで上位表示させる担当」から、「Web全体で信頼される状態をつくる担当」へ、役割が広がっているのです。
クリック数だけでは成果を測れない
AI検索には、成果が分かりにくいという問題もあります。 従来のSEOでは、検索順位やアクセス数、クリック率などを見れば、施策の効果をある程度確認できました。
しかしAIの回答だけで利用者が情報を得た場合、ホームページへのアクセスは発生しません。
その後、会社名を直接検索したり、店舗で購入したりしても、最初にAIの回答が影響していたことはアクセス解析だけでは分からないことがあります。
今後は、クリック数だけでなく、
・会社名や商品名で検索された回数
・AI回答内での引用や言及
・SNSや動画での認知度
・問い合わせ時に何を見て知ったのか
・企業名がどのような内容と結び付けられているか
といった指標も含めて、成果を考える必要があります。
中小企業や個人は何をすればよいのか
中小企業や個人が、SNS、動画、広報などをすべて本格的に行うのは簡単ではありません。
自分がどの分野に詳しく、誰のどのような疑問に答えられるのかを明確にすることが大切です。
そのうえで、単なる情報のまとめだけではなく、
・実際に試した経験
・現場で感じたこと
・よくある失敗
・初心者が間違えやすい点
・自分なりの判断や解説
を加えて発信します。
一般的な説明は生成AIでも作れます。
だからこそ、実際の経験や現場で得た知識、専門家としての視点が、これまで以上に価値を持つようになります。
まとめ
海外のマーケティングカンファレンスでは、検索順位だけでなく、AIの中でどれだけ見つけてもらえるかが重要なテーマになっています。 AIは質問に答えるだけでなく、利用者の商品選びやサービス選びを支援する存在へ変わりつつあります。 そのため、企業や情報発信者には、ブログだけでなく、SNS、動画、広報、外部からの評価などを通じて、Web全体で信頼を積み上げることが求められます。
ただし、特別な裏技が必要なわけではありません。 読者の疑問に丁寧に答え、正確な情報を伝え、自分の経験や専門性を加える。 AI検索の時代になっても、選ばれる情報発信の土台は変わらないのです。


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