【AI時代のチップ入門|速さだけじゃない「本当の競争」】
このシリーズでは、AIを支えるチップの世界で、
今どんな競争が起きているのかを見ていきます。
前回は、なぜNVIDIAがAI時代の主役と呼ばれるようになったのかを整理しました。
- GPUがAIと相性がよかった
- 開発環境も整えてきた
- 研究や教育の現場で広く使われるようになった
ここまで聞くと、「すごい会社だな」と思います。
でも、ここで一つの言葉が出てきます。
ベンダーロックインです。
ベンダーロックインとは?
ベンダーとは「製品やサービスを提供する会社」のこと。
ロックインは「閉じ込める」という意味です。
つまり、
ある会社の製品や仕組みに強く依存してしまい、
簡単には別の会社に乗り換えられなくなる状態
これをベンダーロックインと呼びます。
どうしてロックインは起きるのか?
重要なのは、
ロックインは必ずしも「悪いこと」から始まるわけではない、という点です。
多くの場合は、
- 便利だから使う
- 使いやすいから広がる
- みんなが使っているから安心する
という自然な流れから始まります。
GPUの世界で何が起きたのか
前回少し触れたように、NVIDIAはGPUだけでなく、
- CUDAという開発環境
- AI向けのライブラリ
- 研究者向けのサポート
を整えてきました。
その結果、
- 教材がNVIDIA前提になる
- 論文の実験環境がNVIDIA前提になる
- サンプルコードがNVIDIA前提になる
という状況が生まれました。
これはとても便利です。
しかし同時に、
他の会社のチップに乗り換えるとき、
コードを書き直す必要が出てくる
という現実も生まれます。
「便利」はなぜ「逃げにくい」になるのか
一度たくさんの人が同じ環境で開発し始めると、
- ノウハウが蓄積される
- コミュニティができる
- サポート情報が増える
すると、
そこから離れる理由が、どんどん小さくなっていく
のです。
これが、ベンダーロックインの構造です。
それは悪いことなのか?
ここが大事なポイントです。
ベンダーロックインは、
- 不正な行為
- 違法な仕組み
とは限りません。
むしろ、
- 使いやすい
- 高性能
- サポートが充実している
からこそ起きることが多いのです。
つまり、
強さの結果として生まれる構造
とも言えます。
AIチップ競争の本当の意味
ここまでくると、シリーズのテーマが少し見えてきます。
チップの競争は、
- 単なる「速さ」の競争
ではなく、 - どの仕組みが標準になるか
- どの環境が当たり前になるか
という競争でもあります。
主役になるとは、
「速いチップを作ること」だけではなく、
「みんなが使う仕組みを作ること」
でもあるのです。
ここで新たな疑問が生まれる
もし特定の会社に依存しすぎると、
- 価格の決定権はどうなるのか
- 技術の選択肢は広がるのか
- 他の企業はどう動くのか
という問題が出てきます。
ここで登場するのが、
別の選択をした企業です。
次回予告
次回は、
第5回|なぜGoogleはTPUを作ったのか?GPU依存を避ける選択
をテーマに、
依存を避けるための戦略について整理します。
同じAIの世界でも、
まったく違う立場からの選択が見えてきます。



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