オーストラリアの“16歳未満SNS禁止”から読み解く ー 第4回 ー
SNS規制は、同じ政策であっても国によってまったく違う受け止め方をされます。
それは、その国の文化、政治の仕組み、社会の歴史、SNSが果たしてきた役割が異なるためです。
今回の第4回では、「なぜ国によってこんなに反応が違うのか?」 をテーマに、
オーストラリア・ネパール・日本の違いを“価値判断を含まない中立的な視点”で整理します。
◆ SNS規制は“技術の話”ではなく“文化と社会の話”
SNSは世界共通のアプリで動いていますが、
その使われ方・社会での役割・政治との距離感は国ごとに大きく異なります。
そのため、同じ「SNS規制」でも意味が変わります。
ある国では
「子どもを守るための必要なルール」
として受け入れられ、
別の国では
「自由の制限」
として強い反発が起きることもあります。
これは“国力の差”ではなく、
社会の歴史・政府への信頼・政治参加の方法が違うため に起きる自然な違いです。
オーストラリア:規制を“子どもを守る仕組み”として受け止める社会
オーストラリアでは次のような文化が強く根付いています。
- 子どもの安全が最優先される
- SNS企業への不信感が強い
- 政府の介入が受け入れられやすい
- オンラインの危険性に対する社会全体の問題意識が高い
そのため
「16歳未満SNS禁止」
という強い政策でも、
“子どもを守るための現実的な選択”
として国民から支持が得られました。
ネパール:SNS=“声を上げるための手段”としての重要性
一方ネパールでは、SNSは単なる娯楽ではなく、
“市民が声を上げるための大切なコミュニケーション手段” として社会で機能してきました。
その背景には、
- 情報の入手経路が限られている
- SNSが政治参加や社会の透明性向上に使われてきた
- 若者の不満や社会課題がSNSで議論されてきた
- 市民の声が集まる「公共広場」の役割を果たしていた
という歴史があります。
こうした文化がある国では、
SNSの規制は
“自由を奪われる行為”
として受け止められやすく、
その反発が大きな動きにつながることがあります。
これもまた、社会構造の違いによる自然な反応です。
日本:価値観はオーストラリア寄りだが、政策は“ソフト路線”になりやすい
日本とオーストラリアは、考え方としては次の点でよく似ています。
- 子どもを守りたいという価値観が強い
- SNSの危険性に不安を抱えている
- 保護者・教員が問題に向き合っている
ただし、
日本は法案として強い規制を出すことが非常に難しい国です。
その理由は、
- 法制度が慎重(前例主義)
- 政治がITに明るいとは言えない
- 経済界との調整が複雑
- “自主ルール”を好む文化が強い
- 国民の生活スタイルが多様で、一律規制が合いにくい
このため、日本で起こりやすいのは
- ガイドライン強化
- 学校や家庭での利用ルール
- フィルタリングの見直し
- 啓発や教育でのアプローチ
といった“ソフトな対策”です。
価値観は似ているが、制度は大きく違う。
これが日本の特徴です。
同じ「SNS規制」でも、国によって役割がまったく違う
このシリーズの締めとして、重要なポイントを整理します。
SNS規制は、国によって以下のように意味が変わる。
- オーストラリア
→「子どもを守るための安全装置」 - ネパール
→「市民の声を守るために必要な自由の領域」 - 日本
→「安全が必要なのは理解しつつ、制度化は慎重に進める国」
どれも“その国の歴史・文化・社会が選んだ形”であり、
優劣ではなく、前提条件が違うだけです。
まとめ:SNS規制は「社会を映す鏡」である
SNSそのものが問題なのではなく、
その国がSNSをどんな役割として扱ってきたかが、
規制の意味を大きく変えます。
今回の4つの記事を通してわかるのは、
「SNS規制は単なるテクノロジー問題ではなく、社会そのものを理解する問題」
だということです。
国が違えば、SNSの意味も違い、
その結果、政策もまったく違う姿になります。


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