オーストラリアの“16歳未満SNS禁止”から読み解くー第3回ー
◆ SNSが「やめられない仕組み」でできているという前提
SNSは、“人が長く使うほど儲かる” ビジネスモデルで動いています。
そのため、ユーザーがアプリを閉じられなくなるように設計されています。
企業の目的はシンプルです。
- 利用時間が増える → 広告がたくさん表示できる
- 行動データが多く集まる → 精度の高い広告を売れる
つまり、依存がビジネスの成功に直結する仕組みなのです。
多くの人は「SNSは便利な道具」と捉えていますが、企業側の視点に立つと
「どうやってユーザーの時間を奪い続けるか」が中心テーマになります。
◆ 子どもが特にハマりやすい理由(大人よりも脆弱なポイント)
SNSの仕組みに弱いのは、大人ではなく 子ども です。
脳科学的に見ても、子どもは
- 報酬に敏感
- 我慢や制御の力(前頭前野)が未発達
- 共感・承認に強く反応する
という特徴を持つため、SNSの“刺激設計”に引き込まれやすいのです。
さらに、
- 「友だち関係がSNS中心になる」
- 「仲間外れを恐れる」
- 「見ていないと不安になる」
という心理も加わり、SNSの依存構造と相性が合ってしまいます。
◆ SNS企業が仕掛ける“依存設計”の代表例
● 無限スクロール
終わりがない構造は「続けざるを得ない」状態を生みます。
● いいね・ハートなどの即時報酬
脳内のドーパミンが分泌され、習慣化しやすい。
● プッシュ通知
アプリを閉じても呼び戻される仕組み。
● アルゴリズムによる“強すぎるおすすめ”
興味があるものを次々出してくる → 気づいたら1時間経っている。
● ストーリーや既読制度
「見ないと損」「反応しないと関係が冷える」
という心理的プレッシャーを生む。
これらは偶然ではなく、綿密に設計された依存要素です。
◆ なぜ企業は依存設計をやめないのか?
理由は単純で、SNSの収益源が「広告」だからです。
広告モデルは、
ユーザーの滞在時間 × 行動データ で収益が決まります。
滞在時間が短くなると利益が減るため、企業は次のような構造から抜け出せません。
- 利用時間が増えるほど、収益が増える
- 子どもは特に時間を奪いやすい
- 依存しやすい設計にすれば、事業として成功する
つまり、依存設計は企業努力というより 「儲かるための必然」 に近いのです。
◆ 子どもが自力でSNSをコントロールできないのは“当然”である
大人の一部は
「SNSは自己管理の問題だ」「依存は意志が弱いだけ」と言いがちです。
しかしこれは完全に誤解です。
子どもはもちろん、大人ですら
- 無限スクロール
- エンドレスおすすめ
- 承認欲求刺激
- 通知設計
これらに抗うのは非常に難しい。
SNSは “注意力を奪うプロ” が集まって作り上げた依存システムであり、
個人の努力だけでコントロールできるものではありません。
だからこそ、今回オーストラリアが示した
「16歳未満SNS禁止」という強い措置が注目されているのです。
◆ 依存設計の影響はどこに出る?(子どもへの主要リスク)
- 学習時間の減少
- 睡眠不足
- メンタルの不安定化
- 比較・承認欲求による自尊心の低下
- 対人関係の不安増大
- 現実世界の活動量の低下
特に10代前半は、人格形成の時期。
SNSの依存構造が直接「生き方」や「価値観」に影響を与えてしまいます。
◆ まとめ:依存設計を理解することが、最初の“保護”になる
今回のテーマで最も重要なのは、
SNSは「依存が前提のビジネス」であり、子どもは構造的に勝てない。
という事実です。
- 子どもが離れられないのは意志の弱さではない
- 企業の利益構造が依存を生んでいる
- SNSの利用設計は大人でも太刀打ちできない
- だからこそ国・学校・家庭の支援が必要
という視点が欠かせません。
次回予告
次の第4回では、
SNS規制は国ごとに“意味”が違う|オーストラリア・ネパール・日本の比較から見えるもの
というテーマを、価値判断抜きで丁寧に分析します。


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