なんで選挙だけ、まだ「オンライン化」されていないの?
銀行の振込、ネットショッピング、行政手続き。
今の社会では、ほとんどのことがオンラインで完結します。
それなのに、選挙だけは今も
- 投票所に行く
- 紙に書く
- 人の手で開票する
という、かなりアナログな仕組みのままです。
「オンライン投票にすればいいのに」
多くの人はそう思うはずです。
ではなぜ、ここだけが変わらないのでしょうか。
実は、技術的に「できない」わけではない
まず大前提として、オンライン投票は
技術が未熟だから不可能という話ではありません。
たとえば仕組みとしては、
- 本人確認(ICカード、ID、暗証番号など)
- なりすまし対策
- 重複投票の防止
- 投票データの管理
- 自動集計
こうした要素は、すでに別の分野で実用化されています。
つまり、
「技術的にはできそう」
という感覚は、決して間違っていません。
それでも導入されない理由は、別のところにあります。
問題は「便利さ」ではなく「信頼」
オンライン投票が進まない最大の理由は、
「便利になるから導入しよう」という発想が、そのまま通らない点にあります。
選挙で一番重視されるのは「納得感」
選挙では、
- 不正が起きないこと
- 不正が起きていないと、誰もが納得できること
この2つが同時に求められます。
銀行やネットサービスなら、
トラブルが起きた場合に修正や補償ができます。
しかし選挙は違います。
- 結果は社会の方向性を決める
- やり直しがきかない
- 少しでも疑念が残ると、不信が長く続く
だから選挙では、
「正しい結果」だけでは不十分で、
「納得できるプロセス」が不可欠になります。
オンライン化すると、投票行動そのものが変わる
オンライン投票を導入すると、
単に「楽になる」だけではありません。
- 忙しくて投票所に行けなかった人が参加しやすくなる
- これまで投票してこなかった層が動く可能性がある
- 投票のハードルが大きく下がる
参加者が増えること自体は、決して悪いことではありません。
ただし、ここで重要なのは、
これまでの選挙制度は、
これまでの投票行動を前提に作られてきた
という点です。
「政治家が怖がっている」という話なのか?
オンライン投票について話すと、
「現政権を握っている側が、
自分たちに不利になるのを怖がっているのでは?」
という声が出ることがあります。
この見方は、感覚としては理解できます。
ただし、少し整理が必要です。
もし本当に
「特定の政党や政治家の都合」だけが理由なら、
- 政権が変わったら一気に導入される
はずです。
しかし実際には、
国や政権が変わっても、慎重な姿勢はあまり変わりません。
ここから見えてくるのは、次の点です。
オンライン投票は、
今の政治の仕組みや選挙運用の前提にとって、
予測しにくい変化をもたらす可能性がある
そのため、
特定の誰かが「怖がっている」というよりも、
制度そのものが慎重にならざるを得ない
という構造の問題だと考えられます。
なぜ「慎重すぎる」ように見えるのか
「便利になるなら、多少のリスクは仕方ないのでは?」
そう感じる人もいるでしょう。
しかし選挙は、
- 一度の失敗が社会全体に影響する
- 信頼が崩れると回復が難しい
という、非常に重い制度です。
そのため、
- 試しにやってみる
- 問題が出たら直す
という進め方がしにくい分野でもあります。
結論:遅れているのはITではなく「社会の準備」
オンライン投票が実現していない理由は、
- 技術が足りないから
ではありません。 - どこまでを「安全」と説明できるか
- どこまでなら社会が納得できるか
- 変化をどう受け止めるか
こうした 制度と信頼の問題 が大きいのです。
最後に、
ITは社会を便利にすることはできる。
しかし、社会の納得まで自動で作れるわけではない。
次回予告
次の記事では、
海外ではオンライン投票がどう扱われているのかを見ながら、
なぜ国によって判断が分かれるのかを掘り下げます。


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