海外ではオンライン投票はどう扱われているのか

AIと未来

──「進んでいる国」と「やめた国」に分かれる理由

「日本はITが遅れているから、オンライン投票ができない」

こう言われることがあります。
では本当に、海外ではオンライン投票が当たり前に使われているのでしょうか。

結論から言うと、国によって判断は真逆です。

  • 実際に導入している国
  • 実験したが撤退した国
  • 最初から採用しないと決めている国

その違いを見ていくと、
オンライン投票が「技術の問題だけではない」ことがはっきり見えてきます。


「成功例」としてよく挙げられる国:エストニア

オンライン投票の代表例として、必ず名前が出る国があります。
それが エストニア です。

エストニアでは、国政選挙でもインターネット投票(i-Voting)が導入されています。

ただし、ここには重要な前提条件があります。

エストニアは「国の仕組み」が日本と全く違う

エストニアでは、

  • 国民全員が 国家発行の電子ID を持っている
  • 医療、税金、行政手続きが 最初からデジタル前提
  • 国の成立自体が新しく、ITを前提に設計されている

つまり、

オンライン投票だけが特別に進んでいる
のではなく
国全体がデジタルで設計されている

という点が決定的に違います。

さらに、エストニアのオンライン投票は

  • 投票期間中は 何度でも投票し直せる
  • 最終的な1票だけが有効

という仕組みを採用しています。

これは「強制投票・なりすまし」を減らすための工夫ですが、
同時に「完全な匿名性」とは相性が悪い設計でもあります。


実は多い「やめた国」:ドイツ・オランダなど

一方で、一度は電子投票・オンライン投票を試したが、やめた国もあります。

代表例が ドイツ です。

ドイツが電子投票をやめた理由

ドイツ憲法裁判所は、電子投票についてこう判断しました。

一般市民が
専門知識なしで正しさを確認できない仕組みは、民主主義に反する

これはとても重要な視点です。

  • 正しく動いているか
  • 不正がないか
  • 集計が改ざんされていないか

これを「専門家しか検証できない」時点で、
選挙としてアウトだ、という判断です。

オランダも同様に、

  • ブラックボックス化
  • 市民の不信感
  • 「疑われた時点で成立しない」

という理由から、電子投票機の使用を停止しました。


アメリカは「州ごとにバラバラ」

アメリカもよく誤解されがちですが、
全国一律のオンライン投票は存在しません。

  • 軍人・海外在住者向けの限定的な電子投票
  • 郵便投票が中心
  • 州ごとにルールが全く違う

という非常に分散した仕組みです。

アメリカでは、

  • 技術的な安全性
  • 政治的な対立
  • 不正疑惑が「信頼」を壊す影響

これらを強く意識しており、
「便利だから」という理由だけで全面導入する動きはありません。


海外事例から見えてくる共通点

海外の事例を並べてみると、共通点が見えてきます。

① 技術的に「できるか」より「信頼されるか」

どの国も、

  • 動くかどうか
  • 速いかどうか

よりも、

  • 市民が納得できるか
  • 説明できるか
  • 疑われた時に耐えられるか

を重視しています。

② オンライン投票は「民主主義の根幹」に触れる

選挙は、

一度でも不正だと疑われると結果全体が無効に見える

という特殊なシステムです。


日本が慎重なのは「遅れている」からではない

海外の状況を見ると、

「日本はIT後進国だからオンライン投票ができない」

という説明は、あまり正確ではありません。

むしろ、

  • 海外での失敗例を知っている
  • 一度失った信頼は取り戻せない
  • 選挙はやり直しがきかない

こうした理由から、意図的に慎重になっている側面があります。

まとめ|海外事例から見える本質

海外のオンライン投票事例を見ると、
判断基準は「技術的にできるか」ではなく、
「社会が信頼できるか」に置かれていることが分かります。

エストニアのように導入できた国には、
国家全体をデジタル前提で設計してきた土台があります。

一方で、ドイツやオランダのように、
「市民が理解・検証できない仕組みは選挙に向かない」として
あえて撤退した国もあります。

オンライン投票は、便利さを競うITサービスではなく、
疑われた瞬間に成立しなくなる民主主義の仕組みです。

だからこそ多くの国が慎重であり、
日本だけが特別に遅れているわけではありません。

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