情報過多で脳はどう変わる?|集中力・記憶力に起きていること

ITリテラシー・スキル

はじめに

 第1記事では、私たちが毎日どれほどの情報を浴びているのかを解説しました。
 では、その膨大な情報量は脳にどのような変化をもたらすのでしょうか?

 結論から言うと──
 情報過多は、集中力・記憶力・意欲など、脳の基本的な働きに大きな影響を与えます。

 この記事では、情報過多の時代に“脳の内部で実際に起きていること”をわかりやすく解説します。


脳の処理能力は「平安時代とほぼ同じ」

 まず知っておくべき重要な事実があります。

 現代人の脳は、平安時代の人間の脳と仕組みがほとんど変わっていないことです。
 進化には数万年単位の時間が必要で、たった1000年では脳の構造は変わりません。

 つまり、脳は
 “昔のままの性能”で、現代の1000倍以上の情報量に対応している
という状態なのです。

 当然、オーバーヒートが起きます。


情報過多で脳に起きていること

1. ワーキングメモリ(作業机)がすぐにパンパンになる

 人間が短時間で処理できる情報量は 7±2個 だと言われます。
 しかし、SNSや動画アプリは1秒で何十もの情報を流し込んできます。

 脳はそれを処理しきれず、
 「頭が重い」「ぼーっとする」
といった脳疲労(ブレインフォグ)が発生します。


2. 集中力が続かなくなる

 脳は、刺激の強い情報(動画・派手な広告・バズ投稿)を優先的に処理します。
 そのため、静かで地味な作業──
 読書・勉強・仕事・対話
などに集中する力がどんどん削られます。

 結果として、
 「集中しにくい脳」に変化していくのです。


3. 記憶力が落ちる

 記憶をつかさどる海馬(かいば)は、情報過多になると機能が低下します。

 理由はシンプルで、
 次から次へと新しい刺激が入ってくるため、情報を整理する時間が足りないからです。

 そのため、
 - 暗記が難しい

  • 授業の内容が頭に残らない
  • 会話したことをすぐ忘れる
    などの現象が起きやすくなります。

4. 脳の“報酬回路”が過剰に反応してしまう

 SNSやショート動画は、脳が快感を覚える物質 ドーパミン を刺激します。

 短い時間で何度も刺激を受けると、脳は
 「もっと欲しい」「もっと強い刺激を」
と求めるようになり、いわゆる“スマホ依存”に近い状態へと変化します。

 すると、
 刺激が弱い学習や読書がつまらなく感じる
という悪循環が起きます。


5. 意思力(ウィルパワー)が削られやすくなる

 情報が多いと、選択肢も増えます。
 「どれを読む?」「どの動画を見る?」「どれに返信する?」と判断を繰り返すだけで、脳のエネルギーが消耗します。

 これは**選択疲れ(Decision Fatigue)**と呼ばれる現象です。

 夜になると誘惑に弱くなるのは、
 脳の意志力がすでに削られているからです。


6. 睡眠の質が低下する

 寝る前のスマホは、

  • 脳を覚醒させる
  • メラトニン分泌を抑える
  • 情報処理が止まらない

という理由から、
 深い睡眠を妨げ、脳の回復を阻害します。

 記憶の定着が悪くなるのもこのためです。


“良い変化”が起きることもある

 情報過多は悪い面が注目されがちですが、良い面も存在します。

 例えば──

  • 多様な価値観に触れやすい
  • 新しい興味が生まれやすい
  • 創造性(クリエイティビティ)が刺激される
  • 問題解決の材料が増える

 大量のインプットは、アイデアの質を高めることもあります。

 ただし、
 脳が処理できる量を超えてしまうと逆効果になります。


それでも「悪い影響の方が大きい」理由

 結局のところ、現代の情報量は人間の脳が想定している“限界ライン”を大きく上回っています。

 つまり──
 脳は昔のまま、情報だけ現代仕様。

 このアンバランスが、

  • 集中できない
  • 物忘れが増える
  • 頭が疲れる
  • 意欲が出ない
    といった不調を生むのです。

おわりに

 情報過多は、ただ疲れるだけの問題ではありません。
 脳そのものの働き方を変えてしまう“現代病”のひとつです。

 次回の記事では、
 「情報に溺れないための現実的な習慣」
 を具体的に紹介します。

 スマホを手放さない時代だからこそ、
 “脳を守る使い方”を知ることが大切です。

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