【AI時代のチップ入門|速さだけじゃない「本当の競争」】
このシリーズでは、AIを支えるチップの世界で、
今どんな競争が起きているのかを見ていきます。
前回は、「ベンダーロックイン」という考え方を整理しました。
- 便利な環境が広がる
- 多くの人が使う
- 標準になる
- 結果として、離れにくくなる
これは悪意のある仕組みというよりも、
「強さの結果として生まれる構造」でした。
では、ここでひとつの疑問が出てきます。
もし、自分が大規模なAIサービスを運営する企業だったら、
特定の会社のチップや環境に強く依存することをどう考えるでしょうか。
Googleの立場を考えてみる
Googleは、
- 検索エンジン
- YouTube
- 翻訳サービス
- 生成AIサービス
など、膨大な計算を必要とする事業を抱えています。
つまり、
AIや大規模な計算は「オプション」ではなく「基盤」
という立場です。
もし、GPUの供給や価格が
特定の企業に強く左右されるとしたら――
それは経営にとって大きなリスクになります。
TPUとは何か
そこでGoogleが選んだのが、
TPU(Tensor Processing Unit)という独自のチップです。
TPUは、
- AIの計算に特化
- 自社のデータセンター向け
- Googleのサービスに最適化
という特徴を持っています。
重要なのは、
「GPUに勝つため」ではなく
「依存しすぎないため」
という側面があったことです。
なぜ自社でチップを作るのか
チップを自社で設計・開発することは、
簡単なことではありません。
しかし、もし成功すれば、
- 設計を自社の用途に合わせられる
- コスト構造を自分たちで管理できる
- 供給リスクを減らせる
というメリットがあります。
これは、
技術の選択というより
経営の選択
でもあるのです。
「勝つ」か「縛られない」か
ここで、シリーズのテーマがよりはっきりします。
AIチップの世界では、
- より速いものを作る競争
だけでなく、 - 依存をどうコントロールするか
という競争もあります。
NVIDIAは、GPUと開発環境で
大きな存在感を持つ企業になりました。
一方でGoogleは、
依存しすぎないための選択
としてTPUを開発しました。
どちらが正しい、という単純な話ではありません。
立場が違えば、
最適な戦略も変わるのです。
チップ競争の本質が見えてきた
ここまでの流れを整理すると、
- AIが広がる
- GPUが主役になる
- 開発環境が標準化する
- 依存構造が生まれる
- 依存を避けようとする動きが出てくる
つまり、
チップの競争は、
技術・環境・経営が絡み合った構造
になっているのです。
私たちに関係ある話なのか?
ここで一度、視点を戻します。
これは企業の話のように見えますが、
- 学生がどの環境で学ぶか
- 企業がどの技術を選ぶか
- 国がどの分野に投資するか
といった選択にもつながります。
チップの競争は、
未来の技術の方向性を左右するテーマでもあるのです。
次回予告
次回は、
第6回|チップ競争の中で、日本と私たちはどこに立っているのか?
をテーマに、
ここまで整理してきた構図をもとに、日本の立ち位置と私たちの選択について考えます。
シリーズのまとめとして、
「速さだけではない競争」の全体像を振り返ります。



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