はじめに|しんどいのに成長できるのはなぜ?
「ストレス=悪いもの」というイメージがありますが、脳科学ではストレスには“良いもの”と“悪いもの”の2種類があることが分かっています。 特に、中学・高校の運動部でよくある「もうムリ…でもあと5回いこう!」という場面は、脳にとってとても価値の高い“良いストレスの典型例”です。
では、なぜあの苦しい時間が成長につながり、達成感へと変わるのでしょうか?ここでは、その仕組みをわかりやすく整理します。
運動部の「限界の少し先」を押す瞬間は、なぜ良いストレスなのか
筋トレや走り込みで限界が近づいたとき、仲間や指導者に励まされながらあと数回をやり切るあの瞬間。この短時間の強い負荷は“急性ストレス”と呼ばれ、脳を一気に活性化させます。
やり切った直後には、エンドルフィン(幸福感)やドーパミン(達成感・やる気)が分泌され、「できた!」という成功体験として脳に刻まれます。 体育会系の生徒がメンタルに強いと言われるのは、こうした“限界突破の成功体験”を何度も積み重ねているからです。
一方で“悪いストレス”とは?脳が疲れていく状態
悪いストレスは、終わりが見えない負荷や逃げ場がない環境から生まれます。休む時間もなく、常に他者と比較され、ミスが許されないような状態が続くと、脳はストレスホルモンであるコルチゾールを過剰に分泌します。
この状態が続くと、集中力や判断力が低下し、心の消耗も大きくなります。つまり、短時間で成長につながる負荷=良いストレス、長時間続き心をすり減らす負荷=悪いストレスという明確な違いがあるのです。
なぜ運動部のストレスは“良いストレス”になりやすいのか
運動部のトレーニングは、短い負荷→仲間の応援→達成感という流れがセットになっています。脳はこの一連の体験を「これは成長につながるストレスだ」と判断し、前向きなホルモンを分泌しやすくなります。
さらに、仲間の声かけはオキシトシン(安心・つながりのホルモン)を促し、苦しい瞬間が意外と“心地よい感覚”に変わることさえあります。これが、部活でよくある「しんどいけど楽しい」という独特の経験の正体です。
まとめ|ストレスはゼロにするものではなく“選ぶ”もの
同じ「きつさ」でも、成長につながるストレスと心をすり減らすストレスはまったく違います。
運動部のように、短時間で限界を乗り越え、達成感を得られるストレスは、その後の人生でも大きな力になります。
大切なのは、ストレスを避けるのではなく、「これは自分を強くする負荷なのか?」と見極めること。 この視点を持つことで、勉強でも部活でも、仕事でも、自分を守りつつ成長につなげることができます。



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