1. はじめに
2025年4月から始まった高校授業料無償化。
制度の目的は「誰もが安心して高校に通えるようにする」ことでした。
表面的には“平等”を実現したように見えますが、果たして本当に“公平”な制度なのでしょうか?
最終回では、高校授業料無償化が今後どのように教育格差に影響していくのかを整理し、保護者にとって大切な視点を考えていきます。
2. 「平等」と「公平」の違い
まず整理しておきたいのは、平等と公平は違うという点です。
- 平等=全員に同じ支援を与えること
- 公平=それぞれの状況に応じて必要な支援を調整すること
今回の制度は「所得制限を撤廃し、全員を対象にした」点で平等を実現しました。
しかし、すでに十分な収入がある家庭と、支援がなければ進学が難しい家庭を“同じ扱い”にしているため、実質的な公平さには欠けています。
3. 制度がもたらす格差拡大のシナリオ
では、今後この制度はどんな形で教育格差に影響を与えるのでしょうか。
(1)公立高校の地盤沈下
無償化によって私立人気が高まり、公立の志望者が減少。
結果として「人気のある私立」と「定員割れする公立」の二極化が進みます。
(2)塾・予備校費用の増大
私立志望者が増えることで受験競争が激化。
家庭によっては塾代が増え、教育費の格差がさらに広がります。
(3)地域間格差の拡大
都市部では私立校の選択肢が多く恩恵を受けやすい一方、地方では公立しか選べない家庭が多い。
制度が「地方の選択肢不足」を補うものにならないため、地域格差が残ります。
(4)文化資本による格差
親が情報収集に積極的で、進学戦略を考えられる家庭ほど制度を有効活用できます。
一方で情報に疎い家庭では「制度があるのに生かせない」ケースも。
4. 本当に必要な支援はどこか?
教育現場からは「一律の平等支援よりも、重点支援が必要」という声が上がっています。
- 教員不足の解消
- ICT教育環境の整備
- 経済的に困窮する家庭への重点投資
- 地域格差を埋めるための施策
こうした“公平性を高める施策”が後回しになっているのが現状です。
5. 保護者が持つべき視点
制度の行方は政治や社会状況に左右されますが、保護者が今から持てる視点もあります。
- 制度に安心しすぎない
授業料ゼロはありがたいが、それ以外の教育費は残る。 - 「公平性」を意識して子どもを支える
家庭によって支えられる環境は違う。子どもの強みを生かす学び方を考える。 - 地域や学校の情報に敏感になる
人気校・地域差・制度改正の動きを把握して、進路選択に生かす。
6. まとめ
高校授業料無償化は、確かに“平等”を実現しました。
しかし、その裏で教育格差の拡大や地域・学校の二極化といったリスクも見えてきています。
- 「平等」は形の上で整っても、実際の「公平」はまだ遠い
- 一律の制度では埋めきれない格差が存在する
- 保護者は制度を鵜呑みにせず、子どもの進路や学びを広い視野で見守ることが大切
教育は家庭・学校・社会が一緒につくるもの。
制度の光と影を理解したうえで、子どもにとって本当に良い学びの環境を選ぶ視点が求められます。
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