平等は実現できても公平は遠い？高校授業料無償化と教育格差の行方

1. はじめに

2025年4月から始まった高校授業料無償化。
制度の目的は「誰もが安心して高校に通えるようにする」ことでした。
表面的には“平等”を実現したように見えますが、果たして本当に“公平”な制度なのでしょうか？

最終回では、高校授業料無償化が今後どのように教育格差に影響していくのかを整理し、保護者にとって大切な視点を考えていきます。

まず整理しておきたいのは、平等と公平は違うという点です。

今回の制度は「所得制限を撤廃し、全員を対象にした」点で平等を実現しました。
しかし、すでに十分な収入がある家庭と、支援がなければ進学が難しい家庭を“同じ扱い”にしているため、実質的な公平さには欠けています。

では、今後この制度はどんな形で教育格差に影響を与えるのでしょうか。

無償化によって私立人気が高まり、公立の志望者が減少。
結果として「人気のある私立」と「定員割れする公立」の二極化が進みます。

私立志望者が増えることで受験競争が激化。
家庭によっては塾代が増え、教育費の格差がさらに広がります。

都市部では私立校の選択肢が多く恩恵を受けやすい一方、地方では公立しか選べない家庭が多い。
制度が「地方の選択肢不足」を補うものにならないため、地域格差が残ります。

親が情報収集に積極的で、進学戦略を考えられる家庭ほど制度を有効活用できます。
一方で情報に疎い家庭では「制度があるのに生かせない」ケースも。

教育現場からは「一律の平等支援よりも、重点支援が必要」という声が上がっています。

こうした“公平性を高める施策”が後回しになっているのが現状です。

制度の行方は政治や社会状況に左右されますが、保護者が今から持てる視点もあります。

高校授業料無償化は、確かに“平等”を実現しました。
しかし、その裏で教育格差の拡大や地域・学校の二極化といったリスクも見えてきています。

教育は家庭・学校・社会が一緒につくるもの。
制度の光と影を理解したうえで、子どもにとって本当に良い学びの環境を選ぶ視点が求められます。